買われた花嫁
 なのに、どうしてか彼を押しのけようとした手は広い肩に添えられたまま、むしろ甘えるようにスーツのジャケットを掴んでいる。

 理性を奪われているのは私のほう――。

 私のそんな心の声さえ、彼は全部自分のものにした。

 ずるいという気持ちと、もっと求められたいという想いに翻弄されながら、キスに甘えて唇を緩める。

 ――この人は世界で一番嫌いな男のはずだったのに、と。
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