買われた花嫁
これは恋愛結婚ではなかった、はず
 蓮司さんの指先が私の肌をなぞるたび、自分が世界にただひとつしかない宝物にでもなったような錯覚に陥る。

 指先から伝わってくるのは、火傷しそうなほどの熱だ。

 けれど、その熱を素直に受け入れるたびに、私の心の奥底には出口のない空虚さが冷たい澱のように溜まっていく。

「また、浮かない顔をしているな」

 乱れたシーツの上で、ほんのり熱が残る声が私の頬をくすぐった。

「そう、ですか?」

 不自然に途切れさせたことをしまったと思いながら、私に腕枕をする彼を見上げる。

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