世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 と嘲笑するだろうか。

 想像しただけでお腹の奥が冷えるような、重苦しい感情が湧き上がる。

 私は彼が、認めていない相手にどれほど冷たくするのか知っている。同時に、一緒に過ごして思いがけず楽しかったとやわらかい声でささやくところも知っている。

「また考え事をしているな」

「あっ……」

 悩みに没頭していたせいで反応がおろそかになっていたのか、蓮司さんが不満げに眉根を寄せて言った。

「そんな余裕がまだあるとは知らなかった」

「待って、蓮司さん……」

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