世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました

 脳裏に、私の実家で冷酷に言い放った彼の姿が蘇る。

 両親に対して私を「金で買った」と言い、最低の男を演じたのも、私の価値を一円だと言ってふたりの怒りを煽ったのも、もしかしたら。

 あの日、両親は初めて私をちゃんと見た。九条家の都合のいいお人形ではなく、娘なのだと――そんなつもりではなかったのだと言っていた。

 両親が私をいつまでも利用し続けないように、すべての憎しみを彼ひとりが引き受けるつもりだったとしたら……。

 視界が熱い涙でにじんだ。

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