世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 運転席からは上機嫌な鼻歌が聞こえてくる。気づかれていない今なら、こっそり蓮司さんに連絡を取れるかもしれない。

 不自由な腕を伸ばしてなんとかスマホを近くに寄せ、パスワードを打ち込む。

 手が使えないだけでこんなに不便になるのかと顔をしかめた。それでも、後ろ手に縛られているよりはずっといい。

 通話履歴から蓮司さんの番号を見つけ、発信ボタンを押した時――。

「ああ、だめだめ。だめだよー」

 はっとして顔を上げると、いつの間にか車を止めた朝倉さんが運転席から後部座席を覗き込んでいた。

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