買われた花嫁
 ほかにも様々なトラブルがあったけれど、ようやく解放されたように思う。

 思い出したくないようなこともあるものの、もう大丈夫だろう。

 足もとが崩れるような不安に泣いた夜も、蓮司さんを疑ってしまった苦い記憶も、こうして彼の胸の中に収まっていると、それらすべてが、私たちがこの境地へ辿り着くために必要な道のりだったのだと思える。

「今、なにを考えているんだ」

 耳もとに低くかすれた声が落ちた。

 振り返る間もなく、蓮司さんの大きな手のひらが私の肩を包み込み、そのまま首筋へと滑っていく。

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