世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 蓮司さんは私の身体を無理やり自分の方へと向かせると、顎をすく上げて視線を固定した。

 彼の瞳の中には、獲物を追い詰めた猛獣のような、剥き出しの飢餓感が潜んでいる。

 ここにいるのは私という妻を〝買った〟男ではない。

 愛する妻を渇望してやまない、理性が焦げ付くような熱を宿した男の顔だ。

「……君は俺を誘惑するのがうまいな」

「え? ――あっ」

 彼は私の手首を掴み、自身の鼻先に寄せた。

 香水ブランドに勤める私の肌には、職場でまとったいくつもの香りの残滓があるはずだった。

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