買われた花嫁
 ――これは一種の仕事のようなもの。職場にいろいろな役職があるように、私は新しい会社で〝妻〟というポジションにつくだけ。それになにより、私は他人が期待する最低限の自分を演じることには慣れている。

 これまでの経験が結婚先でも生かせるなんて、と自嘲した。

「お久し振りです、蓮司さん。婚姻届を提出して以来ですね」

 そう、あの日から今日まで一週間ほど時間が空いているけれど、私たちが顔を合わせるのはこれが二度目なのだ。

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