Re:Romance
てかなに、何で香椎はこのコアラの頭取《とうどり》を呼んだの? どういった策?
真ん中に座る香椎が肘をつき、目を細め私をニヤついた笑顔でこちらを見やる。
「どう?朋政、超いい男じゃね?」
「庶民居酒屋での場違いさが半端ないくらいいい男だね。私の好みじゃないけど。」
香椎が今度はコアラ頭取の方を見た。クリチつくねに添えられた大葉を食べている。
「どう?コイツ、俺の元カノの里夏っつーんだけど超いい女じゃね?」
「小学5年生の香山リカちゃんと同じくらいいい女だねえ。ただ香椎の中古って時点でないけど。」
どいつもこいつも中古中古うるせーな。
私は甘酒焼酎を一気に飲み干し、アルコール度数を胃腸で計る。焼けるような熱さにたまらず香椎を睨みつけた。まさかと思うけど、香椎、今日こいつと私をくっつけるために呼んだの?
「ねえ、ほんとやめてよ。香椎のダチとか欲してないし!」
「はあ?なに言ってんの。朋政扱える女なんてこの世にいねえよ。」
「じゃあなんで今日このボスコアラと私を呼んだの?」
「今朋政がオーストラリアの取引先に、日本の中古車大量に仕入れられるとこ探してくれって頼まれてるんだと。」
「……何台?」
「とりまざっと500台。」
「は、そんなに?!」
央海倉庫って確か輸送関係の会社だよね?央海倉庫を通して中古車をオーストラリアに輸出するってこと?500台も?
ただでさえ中古車の値段が上がってるのに。無理難題すぎる!
「ってことなんで!近いうちにまた商談しにいくからリカちゃん!」
「ええー……それまでに仕入れルート探しとけってことですか?!」
「そういうこと。」
中古車部の課長か営業に頼めよ。
そうは言えない自分が腹立たしい。なんせ中古車部の課長はやる気がない。営業は2人しかおらず、ギリギリの人数で手一杯。営業事務は私を含め2人で、私の方が先輩だ。
中古車部の営業事務は、事務仕事に接客をしながら仕入先の開拓もしなければならない。だから離職が激しいのだ。
コアラが私に、“朋政青司《ともまさあおし》”と書かれた名刺を渡してきて、ウィンクする。余計な動作にイラついて、思わず舌打ちが出た。
「またね、元『RUNRU』専属モデルの叶恵リカさん。」
「なあっ!!?」
朋政さんが小声で私に囁く。すると私の背筋に悪寒が走った。
芸名、叶恵リカ。色素の薄いベージュブラウンの髪。見た目に見合う軽さで名前をカタカナで売っていた私。15歳で『RUNRU』の読者モデルに、17歳で専属になってそこから徐々に露出が増えていった。
しかし20歳の時、プライベートで一緒にテーマパークに行った俳優のせいで、私は初めての映画を降板されたのだ。
脇役とはいえ、映画の初オファーがきた時はまさに天にも登る気持ちだった。