Re:Romance
「僕なら、この11月号の最後の見開きに掲載されている先輩を部屋に飾りますよね。」
いや飾るなよ恥ずかしい。
実来君が自分のスマホをスーツのポケットから取り出して、滑らかな指先で画面をスライドさせていく。
そしてその画像を、玲さんに向けて見せた。
「表紙と同じ衣装と髪型ですが、この自然な表情こそ叶恵里夏って感じじゃありません?」
スマホの画面は私まで見えないけれど、最後の見開きページのことならよく覚えている。
緊張で作りすぎていた顔が、撮影が終わった瞬間安心して天井に顔を向け口を開けて笑っている写真だ。
まさかあんなアホ面が見開きで採用されると思わなかったから、黒歴史として色濃く残っているのだ。
というかその画像をスマホのフォルダに入れてるって。
「実来君って、もしかしてモデルヲタクなの?」
玲さんが私の気持ちを代弁して聞いてくれる。
しかし実來君は咳払いで誤魔化し、答えを優にためらう。真面目キャラが窮地に陥っているらしい。
私を一瞥してから、もう一度玲さんを見て口を開いた。
「モデルヲタクではなくて、叶恵リカの一ファンです。」
「は?」
玲さんよりも先に、思わず声が出た。
でも実来君は私と視線を合わせてくれない。
「因みにファン歴13年なので、五智川さんよりも数倍長いですね。」
「……マジか。」
玲さんが、今にも敗北しそうな明日のジョーの顔で項垂れる。さっきまでのジョーは、白い背景と共に天に召されたらしい。
待てよ。実来君が? 13年も私のファンだって??
26歳の実来君から13年逆算しても、今に勝るとも劣らない美少年しか思い浮かばない。
恥ずかしすぎて悶え死にそうなんですけど。こらえるためにも、深呼吸をするようにグラスの水を飲み干した。
そして私が6缶目のビールを手に取れば、それをすかさず取り上げる人物がいた。
ふと見上げれば、そこには面白そうに私を見下げる絶対的王者がいる。
「か、香椎?」
「ハロー里夏。人のこと散々心配させておいてお前は呑気にビールですかこのヤロウ!」
え、なんでここに??
「ほんとに、香椎……?」
乱れた髪をかき上げ、大きなため息をつく香椎寿佐が威風堂々と立ちはだかっている。私が呆けた顔で幻かと見ていれば、後頭部をつかみ引き寄せられた。
「――――ッ」
なんの心構えもなく、一瞬のうちに唇を奪われて。
2秒ほどで解放した香椎が、「ふざけんなよ。」と口角を上げた。