Re:Romance
「課長、それは僕のセリフです!」
「今日も美青年だね実来君!」
するりとネクタイを取った香椎が、熱さを手で扇ぎながら実来君を見る。
私のところまでジリジリと香椎を睨みながら戻ってきた実来君。しゃがんで後ろから私の首周りに腕を回してくる。
首を締められるように、実来君の身体に引き寄せられた。いや引き寄せ方。
「か、香椎さん?!」
玲さんが香椎から壁掛けの時計に目を移し、「ギリ24時前。」と呟いた。
「木叉に聞いてこれでも早めに切り上げて来たんだ。」
「……は、はは。さすが香椎さん。」
「おっし五智川、歯ぁ食いしばれや。」
「だから俺は何もしてませんって!」
玲さんが軽く笑いながらも後退りをする。
香椎に殴られたら重軽傷を負うだろうな。昔そこそこ有名な不良だったらしいし。
男の喧嘩(殴り合い)に興味津々な私が二人のやり取りを見ていれば、実来君に後ろからグッと顔の向きを変えられた。
「ちょ、」
ちゅうっと、吸い付くようにキスをされて。「もう先輩は僕の彼女ですからね?」と、麗しき膨れっ面を見せてきた。最強。
「うん、ワタシ、アナタノカノジョ。」
「なぜカタコトか。」
「あまりの感動にいい日本語が思いつかなくって☆ふふふ♡」
「先輩って、酔うと実はデレます?」
とその言葉に、舌打ちをする香椎がなぜか実来君の頭をつかむ。
「おいそこの平民、お前さっきドヤ顔で推し歴だの偏愛歴だの語ってたよなあ?」
「語ってません。偏愛はどう考えたって五智川さんの方でしょ!」
ちょっとそこの絶対的王者、さっきまで玲さんに啖呵切ってなかった?いつの間に矛先が実来心晴に移動したか。
「彼氏歴1年の俺にはまだまだ敵わなねえってこと分かってるよな?」
「たった1年でいきがんないで下さい。」
「里夏もなんで俺以外の男の前で酔ってんの?酔うまで飲むなって言ってあったよな?」
「えー? リカしらない〜」
「クソかわいくねえ。」
24時を回って、結局ゲームは私の圧勝に終わった。景品に6缶目のビールを貰って満足だ。
五智川さんのマンションを出て、香椎が車で私と実来君を送ってくれることになった。
「あー……深夜帰りかあ。」
後部座席で実来君と並んで座る中、ぼやく香椎。
「……なんか、私のせいですんません。」
香椎と実來君には深く頭を下げておいた。ほんと私の早とちりで、いい迷惑をかけてしまった。
「里夏、謝るのは多分俺の方。」
「え?」
ミラー越しに私を見据えて、また前方へと視線を移した香椎。久々に乗る香椎のクラウスは甘いココナッツのような香りがした。相変わらずチャラそうでほっとする。