Re:Romance
33歳から26歳への振り幅はなかなかのもんだ。
「み。実来くん?!」
「里夏先輩、これって僕のですよね?」
「え?」
「このふざけたお弁当、僕にくれたんですよね?」
「ええと、そうだよ?」
「ああ、ですよね。」
なぜか実来君がせっせとお弁当の蓋を閉め、包みで丁寧に包んでいく。その縛った瞬間にキュッと引く指使いが綺麗だしえろいし。
と思っていたら、実来君の向こうに見える香椎が片眉を上げこちらを怪訝に見てくる。
鼻元に手をあて鼻をすすって誤魔化した。
「課長すみません、ということでこれは貰っていきますので。」
実来君がお弁当を手に取り、香椎に軽く頭を下げる。
いるんだったの謝罪海苔文弁当。早く言ってよ超嬉しいじゃん。
「豚肉のかんぴょう巻は?」
私が箸でつかんだままの豚肉かんぴょう巻を実来君に見せる。どんなシュールな図だとしても私は箸を掲げる。
「じゃあそれは俺がいただくわー。」
香椎があーん。と口を開けてくるから、行場のない豚肉かんぴょう巻は自然とそのお口に突入するわけで。
すると真ん中にいた実来君が、私の手首をぐっとつかんで豚肉のかんぴょう巻をぱくりとかっさらっていった。
美少年によるかんぴょうの咀嚼音を今すぐ録音したい気になるも、実際にはやらなかった。
「このお弁当も豚肉でかんぴょうを巻く発想も、僕には真似できません。」
「でも、受け入れてくれるんだ。」
どうにも嬉しくて、嫌でも口角がふにゅっと上がってしまう。私がそっと笑顔で実来君を見上げれば。そこには頬を染め照れる実来心晴などいない。
すごい剣幕で私を見下ろしていた。
「ちょうどお昼なかったんで。たまには栄養バランスあるもの食べたいし。」
「そっすか。」
颯爽と踵を返し、休憩室を出ていく実来君。
綺麗にピンと張る白いシャツは、真田さんにアイロンをかけてもらったのだろうか。すでに実来君には真田さんという彼女がいるのだろうと、私にはこうして保険をかける癖がある。
でも真田さんとのトークを中断してまで、わざわざお弁当取りに戻って来てくれたの?
そんな実来心晴が好き。
香椎がニヤついた表情で鼻だけで笑う。香椎には見破られているらしい。私が実来君を好きだったこと。
今だって出来るもんなら彼女になりたいけど、まあ無理だよね。私は実来君にとっての悪役令嬢なんだし。
――――そう、私は実来君が好きだった。