Re:Romance
Captivity
高校生の頃、入学式の手伝いで借り出されていた私は、入学式で実来心晴と出会う。
といっても私は、堂々と入学式の手伝いに遅刻した。
「叶恵!お前はこんな日にも遅刻するのか!」
体育館の受付で、新入生の胸元につける花を渡す係だった私。すでに新入生は全員席に着席している状態で、式の始まる10分前だった。
「たく!スカートも短いわネイルも化粧もしてるわ!モデルかなんか知らんがマナーも守れないようじゃ世間の恥だぞ!」
「在校生代表、恥で〜す」
「叶恵ッ!!」
週3で先生に怒鳴れるのは当たり前。仮病使って休んだり早退するのも当たり前。
高校行ってない友達と遊んだり、適当にネッ友とホテル行ったり。単純に撮影で休む日もあったけど、不純な動機で学校行かないことの方が多かった。
何が楽しい? 皆綺麗に列つくって決められた時間に勉強して掃除して。起立、礼って軍隊かよ。黒板必要? 教科書ありゃよくない?
集団色に染まる日常に、生意気にも理不尽を感じていた高校生だった。
でもモデル業は違う。
完璧なスタイルと、ある程度の顔面で集団色から逸脱することができる。
承認欲求にも似た世界線で活躍したかった私は、好きだった雑誌『RUNRU』の読者モデルに興味本位で応募してみたのだ。
そしたら応募理由に目を留められ運良く合格。撮影現場と誌面上が私の全てを正当化してくれる居場所となった。
本来の自分の姿はモデルであるのだと、なんの根拠もなくモデルであることに誇りを持っていた。
自分だけの居場所が欲しいだなんてわがままかもしれない。でもうちは5人兄妹で両親ともに小さな食堂を営んでるから、目立つことしないと相手にしてもらえなかったんだよ。
まあモデルになろうと思った決定的な理由は他にもあるんだけど。
ちょうど4月から専属モデルになったばかりで、浮かれてたってのは確かにある。
でも悪いけど私は遅刻はしたことがなかった。学校でも撮影現場でも。
専属になりたかったし、撮影現場で時間厳守だったせいか学校でも遅刻するという頭はなかった。これだけは守っていたはずなのに、先生はあたかも私が毎回遅刻してるような口調でさ。
どーせ誰も見てないから、仕方ねえかって、思ってたんだけど。
「あの…先生。」
気まずそうに、私と先生の空間に割って入ってきた美少年。
まだその頃は私と同じくらいの背丈で、見た瞬間造形物のような少年だと思った。
その時を鮮明に覚えている。
すでに散ってしまった桜の花びらが地面から舞い上がるあざと優艶なシチュエーション。
ダークチョコの前髪から除く蒼碧は、舞うくすんだ花びらを映さず、なんでか呆気にとられる私を映していた。
ただし綺麗なだけで性的魅力はないから私がどうにかしてやらなきゃって。ああそっか。そう思っている時点で性的魅力を感じていたのかもしれない。
「僕、その先輩が公園で、人を助けていたのをみました。」
「……ええと、君は?」
「新入生代表の、実来心晴です。」
「ああ!」
実来君は新入生代表の挨拶をすることになっていて、入試の成績がトップだったということを知った。
先生はすぐに実来君の言葉に取り合って、実来君が朝目撃した一部始終を話してくれた。
私が登校中に通る公園で、ベンチで酔っぱらって倒れていた女の人を大通りでタクシーに乗せたことを。
彼は初めての学び舎に足を踏み入れたばかりの新1年生で、私みたいなギャルが先生に叱られている場面にも果敢に入って助けてくれた。
好きにならないわけがない。