Re:Romance



『連絡来なかったらどうしよう。って思ってくれてます?』


 私に和紅茶と落雁を持ってきてくれて、そう言葉を添えた実来君。どう聞いても慣れてる男の言葉なのに、惚れてる弱みなのか、ただ格好いいとしか思えなかった。


『思ってないようで、思ってるよ。』

『男をその気にさせるのがお上手ですね。』

『そう、みえる?』

『はい。360度、どこをみても。』


 小さな紫陽花の落雁を一つとり、口に運ぶ。末っ子の私には甘かったお爺ちゃん。お爺ちゃんが好きだった落雁は、やっぱりお爺ちゃん以上に甘かった。

    
『ならそれは、実来君をその気にさせるのが上手いだけだよ。』


 実来君が、その言葉の中身は空っぽだとでも言いたげに肩でため息を吐く。


 和紅茶のポットからカップに注いでくれて。湯気が上がる中、実来君が首を傾け柔らかく微笑んだ。


 実来君からメッセが入ってきたのは、それからほんの10分後のことだった。


『実来君て、私のこと相当軽いと思ってるでしょ。』

『多分、僕が思っている以上には。』

『その僕以上に軽いと思っている女についてきちゃったのはなんで?』

『まあ、一種の人生経験、ですかね。』


 実来君は新入生代表になるくらいの成績優秀者で、制服も着崩さないような真面目な生徒。それでいて誰もが見惚れる美少年。


 私みたいなギャルの「汗かいたからお風呂入りたい」なんて言葉で、純粋な実来君はラブホまでついて来てしまったのだ。 
    

 ちょっとからかってやろうと思っただけなのに、本当についてくるなんて思わなかった。だから私は、彼に猶予を与えたのだ。


『実来君、帰りたかったら私がシャワー浴びてる間に帰っていいよ。』

『え、』

『それと入学式の時。助けてくれて……ありがとう。』


 照れ臭くて、熱くなる顔を隠そうと足早にバスルームに入る。


『ずるい。』


 脱衣所に入ったドアの向こうで、そんな声が小さく聞こえた。


 シャワーを浴び終えて、どうせ帰っただろうと思い、脱衣所からタオル一枚で出れば。



『せ、んぱい、』   

『あれ、え、帰らなかったの?』

   
 実来君が顔を赤くしているのに、私の身体をじっと見ている。


『はは、めっちゃ見てくるじゃん。』

『綺麗だなって、思って……』
    
『いや、細すぎてよく鶏ガラとか言われるし。』

『でも。美味しいですよね、鶏ガラ……スープ。』

『スープかよ。』


 鶏ガラにも、スープが美味しい話にも、全くえろさは感じられないけれど、これは合意なんだと思った。


 単純に、学校では余裕そうな実来君が、顔を赤くしている姿に優越感みたいなものを感じてしまった私。今にも手が届きそうな美少年の崩落に、私はつい手を伸ばしてしまったんだ。


 自分の身体からタオルを取って、後退りをする実来君に裸のまま迫って。

    
ベッドの端につかえて座った実来君の股の間に入り込む。


私は実来君のズボンのベルトをゆるめて、彼の綺麗な蒼碧に映り込んだ。


『実来君の密接ゾーン、入っちゃった。』






  

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