Re:Romance
『り、りか、先輩……』
いきなり名前呼びなんて、ずるいのはそっちだ。
ベッドに倒れた恍惚を物語る実来君。
淡い蒸気を上げながらシーツに縋り、喉元で耐え忍ぶようなか細い声で鳴く。無造作にシワになったラブホシーツですらも、実来君のおかげで惹き立て役になっていた。
『ねえ、私に抱かれたい?』
『そうやって、こっちに応えを求めて。僕から誘ったようにみせようとしてるんですか。』
『そこまで深く考えてないよ。共犯にしたいだけ。』
『充分、深いです。』
『ずぶすぶと?』
『それでいて、どろどろと。』
その反抗するような言い草が、私の身体の谷間という谷間をぞわりと撫でて。鳥肌を浮き立たせながらも、全身に狂った熱が伝導する。
眉根で反抗心をみせる実来君は、私にやられっぱなしが気に食わなかったようで、辿々しい舌づかいで私の熱をくまなく舐め取った。
あちこちを濡らされた感覚は、小さい頃しばしドロ沼に埋もれてみた感覚に似ている。
『先輩、すこしは、きもちよくなってくれました?』
『し、らない。』
『リカ先輩、』
『……ん』
『かわいい、です』
それからは、お互いがお互い、優位に立たれることが気に食わないというように。優位を半分こずつにして、抱いて、抱かれて。
実来君の、私に触れる指がひとつひとつ甘く、今にも10本指全てに恋をしてしまいそうだった。せめてもの恋意に、彼の人差し指を代表して吸うようにキスをした。
『先輩、僕を見て、』
『み、みれない。』
自分の乱れた顔を美少年の前で晒せるほど罪人じゃあない。脈があるうちに腕で顔を隠す他ない。
『なら、すみません。強行手段で』
実来君が私の腕を上へとずらし、溺れきった顔にキスをする。
ねえ、そんなことしたら、益々溺れる一方だよ。
ラブホから出た帰り道、私たちは恥ずかしげもなく手を繋いで帰った。
手を繋ぎながら何度も告白することを考えて。でもラブホ帰りに「付き合おう」だなんて、あまりにも浅はかな女だと思われるに違いない。
実来君は秀才だし、私みたいな体たらくなギャルがとても釣り合うとは思えないし。そうやってネガティブな要素がネガティブを呼び込んで頭の中をいっぱいにした。
そうでなければ、本当に振られた時に痛い目を見る。常にクールでいたかった私は、保険をかけなければこの世から消えてしまいそうな弱っちい専属モデルだった。