Re:Romance
それから何日か経ったある日、学校の廊下で知らない1年の女子に話しかけられた。
『あの、叶恵先輩。』
『え? なに?』
提出物が遅いと、先生に職員室で注意を受けた後。
職員室や会議室のある一階。そこには教室がないため、生徒が少ない廊下で。まるで、私が1人になるタイミングを待っていたかのように。
『あ、わ。わたし、1年の、島咲七花《しまさきなのか》って言います。』
背はかなり低かったと思う。黒い二つ縛りの髪で、前髪の揃った真面目そうな女子だった。
スカートは長いし、靴下は校則通りの白。私のファンにしてはかなりお門違いだ。
『あの、叶恵先輩と、実来君って、どういう関係なんですか?』
大人しそうな割に、ちゃんと言いたいことは言うタイプか。私を相手になかなかやるな。なんて上から目線で思った。
『んー、なんだろうね。とりま唇と身体の関係?』
試すように、つついてやる。自分が負けるなんて思いもしなかったから。
『わたし、実来君と三ヶ月前からお付き合いしてるんです。』
『……へえ。』
はあ? 彼女、いたの??
よくよく考えれば、そんな話をしていないし。あんな美少年が独り身だという方が不自然だ。
じゃあ、なんで実来君は私の誘いに乗ったんだよ。
なんか悔しくて、自分の長い爪が手の平に食い込んだ。
『なんで、実来君とラブホテルなんかに行ったんですか。』
『なんでそれ、知ってんの。』
『たまたま、友達が見たんです。』
『ふうん。さあ? なんでだったかな。まあ、顔がいいから?』
彼女のスカートを握る手が震えていて、さすがに泣いちゃう?
でもわざわざ上級生の、しかも専属モデルとかやってる私を待ち伏せて言いに来たくらいだ。
むしろ怒りの震えかもしれないと思った。
でも実際は。
『お願いです! わたしの居場所、取らないで下さい!』
『え?』
『わたしには、実来君しかいないんです!』
『……』
『うち、母親がいなくて。父親も、夜中しか帰ってこないし、いつも独りで、寂しくて怖くて。だから実来君がいないと、わたし……』
なんだろうね。まだ同じ家庭環境で悩んでいた方がマウントとりにいけたのかもしれない。
私は父親も母親もいて、兄が1人に姉が3人もいる。
彼女とは正反対の大所帯で、毎日にぎやかといえば聞こえがいいかもしれない。でも昔、夫婦喧嘩の最中に聞いた二人の言葉が、ずっと頭に残っている。