Re:Romance
Ecology



「リーカちゃん!リカちゃんて一人暮らしなの?」

「………」

「ベッドはシングル?ダブル?クイーンからのキングー?」

「セミダブルサイズの布団ですね。」

「急に敬語で壁つくるじゃん。でも俺もベッドより布団派だよ?」


 創ったつもりもない壁が、時として生理現象として顕著に表れるもんなんだと自得する。

 皆と店を出た後、私だけ違う電車のため、玲さんが送ると言ってついてきてくれた。


 もちろん実来君はついてきてはくれない。いや今まで送ってくれたどころか、食事したのだって今日が初めてだし。

   
「玲さん、」

「え?なになに里夏ちゃん。告白かい?この玲さんに?」

「いえ違います。耳をかっぽじってよく聞いてください。」

「じゃあ膝枕で耳かきして。」
 
「やっぱり、すみません。中古車200台、いいです。」

「え?」

「まあ私の仕事なんで、自分でなんとか仕入れルート探します。ご迷惑をおかけしてすみません。」


 暗い電車の高架下沿いで、なんとなく自分の浅はかさに嫌気が差し、頭を下げた。


 香椎は300台も確保してきてくれたってのに。残りも他の人間に任せちゃ、私には何も残らないよなあって。 


 功績が欲しいわけじゃないけれど、女の武器で男への貸しを作りたいわけでもなし。


 今となっては唯一の居場所であるMURANOでの業務を怠りたくないと思っただけだ。


「うん。里夏ちゃん、やっぱ俺の思った通り、いい女だね。」

「え?」

  
 等間隔に並ぶ電灯の隙間。その半端な暗さを照らすのは、玲さんの向こうから来る快速電車。


 ちょっと行った先には駅があるため、電車の速度がゆっくりと制御されていく。夜の銀河鉄道は高架下から眺めるのがいい。乗ってしまえば魅力も半減未満だ。


 その電車に目を奪われていたせいか、ふと目の前には玲さんの顔が間近に迫った。

   
「ちょッ、なに!」

「隙あらばキスしようかと」

「んなあほな!」 


 私は持っていたトートバッグを玲さんの胸元にあててやった。


 バッグの重みでふらつけば、両頬を両手で支えられる。いやせめて腕か肩支えろ。


「頬ならキスもOKだって言ってる気がする」

「頬に張りがないんでヒアルロン酸注入してからなら考えます!」

「じゃあその注入代、俺に払わせて?」

「整形代払ってくれる男が正義とは思えませんね。」
   
  
 今さっき出会ったばっかでなんなんだこいつ!やっぱあたしゃセフレ要員かヒアルロン酸注入要因かい。


 バッグに入れていた眼鏡ケースから眼鏡を取り出し、再び黒縁眼鏡姿の可愛い私に戻した。


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