Re:Romance
Falsehood




 グレーのスーツにはくすみ系ネクタイ、ダークブルーのスーツには原色系、クロにはシロ。お風呂上がりにはコーヒー牛乳。


 それでいて気分のまとまらない雨の日は同系色でまとめて。這いずり回るシューズは防水スプレー完備の黒一択。


 目の前の支社からお越しになられたリテール統括部課長代理は、会社を舐めきって仕事をしているとでもいうのか。


「毎回毎回ですね、具体的な戦略がないまま数字だけ上げろと言われてもこっちは手だてがないんですよ!」

「そ、その手だてを考えるのがあなた方の仕事で、」

「こっちは当初言われた通り月間目標8%達成してやってきてるんですよ?! それを半年すぎていきなり8.5%にしろ?! そっちが持ってきた数字なんでしょ! 手だてを考えるのがリテールの仕事ってもんでしょう!」  


 左隣で脚を組み、僕の手綱も握らず、犬笛だけを吹く香椎課長が、やいのやいのの合いの手を入れる。


「そーだそーだ言ってやれ実来〜。俺たちがしっかり土台から建築したゴールポストを勝手に動かすなってなー。」


 役職に就く香椎課長は、動かしやすいダストボックスを肌見放さず持っている。


いつでもゴミはここへどうぞと、そのゴミを仕訳する一番当たり障りのない仕事をして、メーカー役員である父親の肩書を守っていらっしゃる。


今はリテール統括部の課長代理から発せられるゴミ発言が有効かどうかを仕訳しようとしているところだ。


 右隣には、ひたすら机に顔を向け、支社側にも店舗側にもどっちの肩も持てない橋田(はしだ)部長がこじんまりと同じ会議室で息をひそめていた。


「た、例えば、展示会で顧客を確保し、店舗の試乗会に漕ぎ着けるようにするとか、」

「展示会や試乗会に来る人間が、新車購入希望者だとは限らないんですよ!」

 
 しかしながら僕はこの空間で、課長の指に転がるボールペンが何よりも気に食わなかった。








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