Re:Romance
「お前って真田と付き合ってんの?」
だるそうな目尻に涙をためながら、セクハラプライバシーに堂々と突っ込んできた。眉根にシワを寄せる。嫌な顔一つで百獣の王に対抗してみた。
「付き合ってません。」
「じゃあなんで仲良くカフェとか異空間いっちゃうの。」
「コスパの悪いカフェでも、新規開拓は仕事につながる可能性だってありますから。」
「真面目か。」
窓の向こうには中古車販売の青空駐車場が見えて、ちょうど里夏先輩が顧客に案内している最中だ。
僕のささやかな脇見を見逃さなかったらしい。課長が僕の視線を辿り、遠くの彼女を見つめる。
「実来くんって半端なハーレム築いて楽しみたい人なの?」
なにが言いたいのかさっぱりわからない。でもまるで百獣の王にカツアゲされている気分だ。
「香椎課長、この間ショールームの派遣さんたちと飲みに行ってましたよね?」
「え?知ってた?!」
「しかも先月は、別店舗の女性事務員3人対1人で夜にご飯食べに行ってましたよね?」
「俺の動向、逐一メモってんの?」
「婚約者がいらっしゃる身で、なに半端なハーレム築こうとしてるんです?」
香椎課長は膝から崩れ撃沈した。
ムラノ取締役専務のご子息が、「言いふらさないでね。」と僕を拝んだ。
それでいて里夏先輩とも飲みに行っていること、僕が知らないとでも思っているんですか? もしくはうちの女性社員の情報網を侮ってます?
「おじさんだって若い子の斬新な空気吸いたいのよ〜。」
それでいて里夏先輩にボディタッチが激しいのは何でなんですか。
「課長、その胸のボールペン。どこで手に入れたんですか。」
ずっと気にしていることを隠し通さなかった僕が格好悪いのは理解している。
課長のように背が高く、エリートの星の元に生まれた訳でもない。自意識過剰な人間になるには、したたかに生きる覚悟を持って生きるということだ。
格好悪さを見せるのも一つの手段。相手に隙を見せれば、洗いざらい聞きたいことが聞けるという僕なりの魂胆。
「ああ、これ?」
胸ポケットからミント色の細いボールペンを取り僕に見せつける。課長の風貌には似つかわしくないのに。なぜか彼の手には馴染みすぎている。
「DOLLってコンパクトカーの新色が出た時の記念品よ。」
わざとらしく、窓の向こうの里夏先輩を見る課長。
これ見よがしか。イラッとする。