Re:Romance


「あ、やあ、ま、って」 

「先輩、ちょっと締まり悪すぎ」

「ふ、ざけんな。んんぁ――――」 

「僕に感謝して下さい。里夏先輩の黒歴史を正しく訂正したのは他でもないこの僕なんで。」

「た、たのんでないので。」

「“実来君、ありがとう”。」

「み、みらい君、粗チンすぎます……」  

  
 彼が私の最奥に粗チンを響かせて、私は脳天を突かれたかのように息を詰まらせる。


「先輩ってなんで敬語なの?」

「敬語は純情乙女の必須アイテムなんで、」 

「その純情乙女が高校生ん時、純情少年を食った逸話は社内に広めてもいいと?」


 私の本当の黒歴史を知る実来心晴は、夜のマグロを握るよりも、こうして私の弱みを握るのが上手い。


 早い話、相当なギャルだった私が、当時は純情少年だった実来君をひっかけてその体裁を奪ったと。そういうことだ。


 しかも当時実来君には彼女がいた。彼女に浮気をつきつけられた実来君は、彼女と揉めに揉めて別れてしまい。


 それなのに私は、一度限りの関係だからと実来君を突き放した。
 

「いい加減僕の青春返して下さい。」

「それなら青春できそうな女性と関係を持てばいいのでは?」

「例えば、秘書課の三谷さんとか?」

「いいですね。橋田部長と不倫してますけど。」  
  
「それならショールームの磯村さんとか?」

「素敵ですね。彼女全身矯正下着ですけど。」

「矯正下着って脱がすの大変そ。」


 そうつぶやく実来君。

 彼は今、冷笑を浮かべつつ、粘度高めな音をこれでもかと響かせながら。あなたの核芯はとうの昔に見破ってますよ的な感じで突いてくる。


「ココきもち?」
「ン゙っ゙」
「ガチかよ」


 狂ってる。


 私の高校時代の黒歴史、つまり彼にとっての恨みを晴らすため、彼は私に狂ったゲームを強要している。


 仕入れともなる中古車のネットオークション。狙った獲物を競り落とした方の勝ち。


 実来君が勝てば、こうして私を好きにする権利があるらしー。私が勝てば、きっと臓器を売らせてくれるのだろう。


 残念ながら私は今だ勝ったことがない……。


「ん、あッ、もうむり。いけない、から」
     
「自分の気が反れてるのが悪いんでしょう。」

「そらしてるんですっ」

「あと1回いったら解放しますよ、先輩」  
  
「馬鹿――――」 


 野郎。とまで言えず、実来君に唇を塞がれる。唇を舐め、その入口を舌でこじ開けられて。ふわりと実来君の香りが鼻をつく。


 柔軟剤の香りがする男って、女の臭いしかしない。





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