Re:Romance
舌を吸われて、舌で舌を絡み取られて。口内へゆわりと侵入する。ぬるりと脳髄が一気に堕落しダメになる。
「“だから勘違いする。そんな甘いキスされると、コイツ、私を好きなんじゃないかって――――”」
「……は、」
「今、そう思いましたよね?」
「ななななんて自意識の過剰さ!」
「どうかご安心を。僕、ヤリマンに興味ないんで。」
「どうぞご安心を。私、ヤリマンでしたから。」
ホテルに直行、ホテルから直帰。
こんなに単純明快な関係、近藤勇と土方歳三、シャーロック・ホームズとワトソンの関係よりも明白だ。
「先輩、ちょっと足あげて」
「な」
「おいババア。足。あ・げ・て。」
私《ババア》を殺り終わった後の彼は、酷く冷めきった瞳をくすぶらせている。にも関わらず、事後は必ずと言っていいほど私の身体を綺麗に磨いてくれるのだ。
シャワーを浴びるからいいのに。この言葉が出ない。
彼の前世は介護福祉士だったのか。このまま下の世話までさせたら私の人としての人生は終わる。
この事後処理の扱われ方が、女の恋情を左右させるのだ。ヤリマンだった私だから分かる。本当に身体だけの関係ならば、こんなに丹念に、タオルをお湯にまで湿らせて拭いてくれることは絶対に有り得ない。
「それよりも。今日競り落としたクラウス、あれ売れるんですか?」
下着を着ける私を前に、ペットボトルのミネラルウォーターに手をつける彼。爪の血色がいい。ほのかロゼ色の爪に見惚れる自分は、手の甲に、そこから流れるように続く蒼碧の血管に目だけで這わせる。
気管支を潤そうと喉仏が上下する。乱れた後でも彼は美くしくなまめかしい。
同じ新車営業部の連中は皆イケメンばかりだと謳われている。しかし26歳の彼ほどアンニュイ且神秘的な男はいない。彼のせいで周りがぼやけるほどに。
私が言いたいことはただ一つ。とにかく見てくれが私のどストライクなのだ。
「売れるか売れないかではなく、売るんです。」
「レアとはいえパーツだってもう生産されていないのに?」
「パーツだけならいくらでも出回ってますよ。それにメーカーはわざと生産しないだけだし。」
「市場に出さないよう、メーカーが止めていると?」
「フリマサイトやオークションとの価格競争でメーカーは勝てませんからね。パーツだけ製造する時間とコストの無駄です。」
「それならいっそ、新型車出したほうがまだ儲かると?」
「そういうことです。だからレアにはさらに値が張るんですよ。」
悪循環といえるのか、それとも暗黙の了解とも言えるのか。
なんせ希少《レア》は尊い。世間が希少に踊らされている。まるで、私が実来君に踊らされているように。