Re:Romance


「ごめん。色々仕事で、行き詰まってた時でさ、」

「ずっと連絡しなかった寿佐も悪いよ。って言わないの?」
  
「い、言ってほしいの?」

「うん。言ってほしいね。」

 
 香椎と付き合っていた時、連絡を途絶えさせたのは私だ。自然消滅させた私が悪い。


 香椎が腕をゆるめる。私はせめてもの償いに、香椎の方を向いて。言われるがままに言ってみた。


「ずっと連絡しなかった、寿佐も悪いよ。」

「超棒読み」

「にゃ、にゃーん。」

 
 なんだこれ。恥ずかしすぎて、香椎のお顔が見れない。
 

「りか、」
「へ?」
「まつげついてる」
「どこ?」


 私が顔を上げれば、すぐに香椎の顔が迫って。


両手で頬を挟まれ、キスをされた。


「んんッ」
 

 香椎の力に敵うはずもなく、舌を入れられて。25〜29℃の温度が舌の上を行ったり来たりする。


 やばい。と香椎の胸あたりを押さえれば、腰に手を回されて。密着をさらに詰められる。


「まッ、」
「ん?俺が欲しい?」


 殴りたいのに、このチャラ課長はまた簡単にキスをする。
 

 昔付き合っていた時のぬかるんだキスを思い出す。メディアの露出が激しくなったモデル時代。香椎も社会人としてまだ浅く、お互い必死に生きていた中で、束の間の快楽をただただむさぼり合ったあの日々。 


 今はもう、昔吸っていた愛煙家のフレーバーは感じられなかった。


 ――――やばいヤバい、元カレーとのキス後のカレーライスは味が分からなかった!


 そういう時は仕事を忙しくするためにも、お客さんが来たら率先して案内に回るのがよい。


 結局お客さんの案内が終わったのが14時で、そこから実来君のリストを上から片していく。しかしどの店舗も希望スペックの在庫は100台にも満たず。


 一件だけ100台確保できる店舗を見つけ、とりあえず実来君に連絡を入れた。


 それから数分後のこと。

 
「先輩。部長と課長から購入許可もらったんで、今から横浜の店舗に行きましょう。」
 
「へ? 今から?」

「はい。」


 中古車部の事務室に来た実来君が、疲れも見せない美しさでそんなことを言いに来た。橋田部長と香椎から承認をもらったらしい。橋田部長は新車部、中古車部両方を兼任しているのだ。


 私が輸出中古車の仕入れを請け負う件は、香椎からうちの中古車部の課長、濱部《はまべ》課長に一報は入れてもらっている。


 とりあえず外回り中の濱部課長に連絡を入れておいた。高市さんを独りぼっちにさせ、実来君と二人で急遽、横浜の中古車を確保しに行くこととなった。


 実来君と二人きりの社用デート。嬉しすぎる。

  
 でもそれ以上に香椎とのキスが鮮明すぎて、なんとなく実来君の顔が見れない。


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