Re:Romance
「里夏先輩、なにぼうっとしてるんです?ナビ入れて下さい。」
「ああ、はい。」
「店舗名、スピンステージでしたっけ?」
「うん、うちとの取引、過去に一度もないからかなり厳しいんじゃない?」
「でも一気に100台ですよ?中古車は売れなければ売れないだけ年式が上がっていくんです。向こうだって大量販売できるに越したことはないんじゃないですか?」
世界に名だたるムラノの子会社なら、相手が引き下がることもないだろう。ただ一元様だし、足元見られないようにしないと。
ちなみに残りの100台は、MURANO横浜店の在庫で無事確保できたらしい。
「とにかく値引き交渉は具体性を提示するのが鍵です。」
運転をする実来君が、真ん中に置くビジネスバッグからファイルを取り出す。
「これ、先輩も目を通しておいて下さい。」
ファイルの中には、100台分の合計希望価格と納品場所、納品予定日、横浜港までの配送会社、オーストラリアメルボルン港への輸出事由。さらに過去2年分の大量仕入れした際の参考仕入価格等が記載された用紙が入っている。
比較できる競合対象がないのは痛い。ちゃんと過去に大量仕入れした際の参考価格まで調べているのはさすが実来君だ。
というか、本気度がすごい。
「実来君。そこまで逆出向狙ってるなら、最初からムラノ自動車に勤めればよかったのに。」
「嫌味ですか? 就活で落とされたんですよ。」
「実来君が? 落ちたの?」
「はい。2次試験のグループディスカッションで、柔軟性がないって言われて。」
「あー……。なさそう。」
「僕の何を知ってるんです?」
「ホテル行ってやることだけやるだけ。毎回おんなじルーティーンで柔軟性がない。」
「は?」
実来君が握るハンドルの手を持ちかえる。
「それはつまり、僕のセックスに不満があると?」
「ん?」
「言って下さい。気持ちよくないなら直しますんで。」
セックスを強要する真面目君は、セフレに対するセックスにも真面目に取り組む美少年らしい。
ねえ、なんでそういう思考になるの?
「実来君への不満、今度箇条書きにしてメールしようか?」
「箇条書きにするほど僕のセックスはダメなんですか。」
「……いや、そういうことじゃ。てかそういうところがダメなのかな?」
ははは、と窓の外に視線を流す。
信号待ちで実来君が車を停めて、車内がゆるりと静まりかえる。
「僕の、“そういうところ”というのが嫌いですか。」
「へ?」
「責任を取れないというのは、そこに答えがあるんですね?」
「唐突になんの話?!」
「先輩って、僕のこと嫌いですよね?」
「嫌いなら、弁当なんて作らんし。」
「なら好きなんですか?」
「勘違いも甚だしいよ君。」