Re:Romance


 好きだよ。


多分。私ってば、今でも実来君が好きなんだ。


 自分でも驚いたことがある。


他の男と付き合うことを望んでいたのに、いざ玲さんに付き合おうと言われて断ったこと。


実来君が合コンの帰りに私を引き取りに来てくれて、めちゃくちゃ嬉しかったこと。


今だって仕事とはいえ、二人で外回りに出掛けられて浮かれている自分がいる。


 自分の中でずっと逃げていた答えが、ずっと私の後を追ってきているんだよ。時間が全てを忘れさせてくれるなんていうけれど、こうして再び出会ってしまえば嫌でも呼び起こされる。


 実来君がうちの店舗に配属されてきたのは、2年前。新卒早々配属された店舗では、一人で半期分の数字を一月で売り上げてしまったらしい。


ビギナーズラックかと試しにうちの店舗に異動させてみれば、運ではなく実力だったことが判明した。


久々に彼を見た瞬間、高校時代の記憶が一から十まで蘇り、私は卒倒しそうになった。


 いたいけな純情少年をキズつけてしまった思い出は、罪悪感なんてものでは片付けられない乱調さだ。

 
「実はずっと実来君が好きでした」と告白してしまえば、あの日の想いは報われない。島咲さんのためにわざと悪役を演じたことを知られてしまえば、悪役は私でなく、島咲さんになってしまうのだ。


 島咲さんと別れてしまったのなら尚更。突き放した手前、やっぱり好きでしたなんて、あまりにも都合がよすぎる。


 結局スピンステージでの値引き交渉は、実来君の思惑通りに事が進んだ。


 スペックがギリギリのものが多いとはいえ、相手も一気に在庫を手放せることと、MURANOと新規開拓に繋げられたのはメリットだったらしい。


 ただ一番の難関は、央海倉庫のあの朋政《コアラ》だ。


彼は海運という輸送会社の社員にも関わらず、オーストラリアの自動車企業との信頼関係を築くため、買付の仲介を担っているらしい。


なんでもオーストラリアに央海倉庫の支社を設立するためには、その自動車企業との関係が重要になってくるのだとか。 

  
 実来君は残り半期分の中古車売上を一気に片付けたいと言っていたが、腹黒そうなコアラ相手じゃ絶対に無理だと思う。


 帰りの車内の時計は、17時すぎを指している。


 私の身体と等価交換とはいえ、私一人じゃ、価格を抑えての仕入れは絶対に無理だった。 


「さすが実来君。実来君って、しっかりものの長男?」

「はい。低能な姉はいますが。」

「さすが長男。」

「次男だったらできなかった。」
 
「実来君、本当にありがとう。ございました。」


 助手席でシートベルトをしめながら、軽く会釈をする。


 すると実来君が、またもや思わぬ提案をしてきた。


「先輩、賭けしませんか。」

「復讐のスパン、短くない?」 
 
「復讐をする間隔に長いも短いもありませんよ。」

「そうなの? まあそっか。」


 はいはい。どうせまた私が負けていつの間にかラブホにいるパターンでしょ? で、勝手に実来君帰っちゃって、私が一人でラブホから出てくる哀しみの朝焼けコースでしょ?


 今度はなに? 私を洗って天日干しまでしてくれるの?





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