Re:Romance
新車部の会議室は中古車部と違い、広々とした空間。且ロフト風を意識したスタイリッシュさが特徴的だ。
同じキャスター付きの椅子とはいえ、中古車部の椅子はいかにも事務用家具だ。歴然とした差を設けるのは一種のハラスメントになるのでは?
唯一新車部の欠点をあげるとすれば、隅に置かれた生い茂る観葉植物の世話をするのが大変そう。
名刺を受け取った央海倉庫の二人が、しぱしぱ瞬きをする。深々と頭を下げ、ゆっくりと顔を上げる実来君をじっと見つめているのだ。
テーブルの脇で、全面ガラス張りの窓から、差し込む陽を背中に浴びるコアラとムキシツ。
目の前の実来君がそんなに神々しく見えるのか。
「……ああ、目元。目元が。うん。似てるね。六神くん!」
「よく見てください元課長。唇ですよ。唇の形と色が瓜二つ。」
「六神君。美青年だからって見るところがやらしいよ。」
「すみません。常日頃婚約者の唇に触れているもんですから。」
そんなことをいう二人に、香椎がいぶかしげに首をかしげる。
「実来、まさか知り合いなの?」
「え?」
一瞬香椎を見上げ、再び二人の名刺に目を落とした実来君。その表情が険しくなっていくのを里夏は見た。
「あ、あーー……」
何かを理解したらしい。名刺と二人の顔を見比べてから、ほんの一瞬、下卑た笑いを漏らしたのを見逃さなかった。
「央海倉庫さんと聞いていたので、もしかしたら姉の知り合いが来るのではとくだらない期待を抱いていましたが。そうですか。あなた方が。」
さっきまで緊張していた様子の実来君の態度が、明らかに一変した。抑止する心に反し、口角が上がっちゃう的な。
なに。その、すでに勝ち誇ったような顔。
「へえ、何、お前ら。実来君のお姉ちゃんとお友達なの?」
椅子を引く香椎が、顔をにやつかせながら皆に座れと顎で指図する。それぞれ上座から着席していくタイミングで、用意していたペットボトルのお茶を配る。
「お友達ってほどではないけどね?お姉さんとはそれなりに慎ましい距離を保ちつつ親しくさせていただいております。」
「俺は実来春風さんの婚約者でーす。」
え? そうなの……?
実来君のお姉さん? ムキシツと結婚秒読みなの??
スタイリッシュな空間で完成されたヒエラルキーの縮図。その頂点に君臨するのは、売り手のはずの実来心晴らしい。
対面で座り、今回の商品画像一覧を載せた12インチのタブレットを配る。私も下座に着席すれば、コアラがなぜか私に笑顔を向けてくるから怖い。
「で? これはどういう得策かなあ叶恵さん。僕は500台ってお願いしたはずなんだけど。」
「その件につきましては、申し訳ありません! もし、500台でいいのであれば、そちらから希望商品を選んでいただければと。」
「中古車、700台? 叶恵さんが相当のやり手バイヤーだってことは認めるよ。」
「い、いえ、滅相もございません!」
咄嗟にコアラから顔を反らし、頭を下げる。恥ずかしくて熱くなる顔はどうにも上がらない。