Re:Romance
香椎300台と実来君200台、そして、五智川玲さんから200台……。
やっべやっべ〜。私、全然やってねー。あしながおじさん、何人いるの?
これが自業自得案件の実態だ。
玲さんにはしっかり断ったはずなのに、たまたま別件で横浜港から中古車を輸出する案件があったそうで。
港までの運送コストが一律だからと、ついでに中古車200台、港にあるムラノ保有倉庫にスタンバイ状態にしてあるらしい。
玲さんから香椎に連絡があったらしく、先週、私は香椎に中古車部の会議室に呼ばれていたのだ。
あの時の香椎は、超怖かった。同じ会議室なのに、キスされた時とは全く違うから……。その日の夜、布団の中まで引きずったくらいだ。
『たかだか合コンで知り合った男に仕事頼むなんて、どういう神経してんだお前!』
『す、すみませ』
『謝って済む問題じゃねえよ馬鹿!何年社会人やってんだよ?』
『ええと、かれこれ6年、ちょっと。』
『営業舐めんのも大概にしろ!どうすんだよ500台が700台って?!お前がどうにかしてくれんの?!』
久々に怒られると胃が痙攣する。芸能事務所に所属していた頃、社長に怒鳴られて以来だ。
学生時代はいくら怒られても何ともなかったのに。お給金を頂く大人が怒られるのは、誰にも許されない気がする。
本当にあの時の香椎は、私にドロップキックをかますのではないかと思うほどキレていた。
それから香椎とは社内で喋りもせず、連絡も取らず。今日に至ったというわけだ。気まずくて仕方がない。
「その件については、こちらからはその日のうちに早々にお断りさせて頂いたはずなのですが。メーカーもたまたま別件で輸出案件があるからと、好意で提案して頂いたようなものでして。ですから御社の希望スペックをその中から選択して頂ければと思います。」
実来君が率先してフォローに出てくれて。嬉しくて隣の実来君を見れば、実来君とその向こうにいる香椎、両方に冷めた目で見られた。
「うーんまあ値段によってはこのまま700台買い取ってもいいんだけどねえ。」
「え?そう、なんですか?」
「クライアントは日本車に特化した大手used 販売業者だからね。信頼性が何よりも優先されるんだ。並行輸入よりも正規販売店を通してるってのは消費者にとって最大のメリットなんだよ。」
香椎が目の前に座るコアラに、「お前という存在が仲介することで正規ルートじゃなくなるじゃん。」と的確なツッコミを入れた。
「今回豪州クライアントとの商談が上手くいけば、この先も弊社輸送を使ってくれるらしくてね。メルボルン支部設置に貢献してもらえる可能性は大きいんだよ。」
その言葉と笑顔を添え、彼より提示された希望グロス金額。
香椎は明からさまに、ないな。と、背もたれに背をつけ腕組みをする。