Re:Romance
犠牲を払った商談が終わり、央海倉庫の二人を送り出した後、私は香椎に再び会議室に呼ばれていた。
玲さんの200台が後の祭りとはいえ、きっとまたそのことをねちねち言われるのだろうと思っていた。
のだけれど。
「……あの、すみません。」
「なにが?」
「本当に、私の軽率な言動のせいで、500台が700台になってしまいまして、」
「いや、そうじゃなくて。つかまあそんな固くなんな。」
さっきまで6人いた会議室が、2人になった途端ガランとしている。中古車部よりも広いから特に。
私の中で香椎は、元カレ以前に上司だ。つい最近怒られている手前、固くならざるを得ないじゃん。
私以外いないからといって、テーブルの端に浅く座り、床に長い脚を投げ出すのは人としてどうなの香椎寿佐。
香椎から離れてぎゅっと手を組み立ちすくむ私。
「こないだは言いすぎた。悪かったよ。」
「……え」
「感情的になりすぎたわ。どうかしてた。」
「いや、私の方こそ。」
香椎が額に手を置き、そのまま髪を掻き上げる。以前中古車部の会議室で見た時同様、香椎は相当疲れているようだ。
「そういや今日からそっちに新人来たんだよな?」
「うん。可愛い派遣の子。まだ年齢聞いてないけど、多分若いよ。興味ある?」
「へえ。まあ、かなり興味津々。」
「若い女子だもんね。」
「妬いた?」
「焼くか。」
なんだか香椎の様子にほっとしたのもあって、思わず渇いた笑いが漏れた。
そんな切り替えの早い私に、香椎も切れ長の目を細め、首を傾け見てくる。
「てか、なにお前。五智川と付き合ってんの?」
「え?まっさかあ。」
「ほんと? アイツ、相当お前に入れ込んでんじゃん。」
「はは、さすがに中身だけチャラいのは私の嫌いなタイプだし。向こうだってからかってるだけでしょ。」
「からかってるだけの奴が、わざわざ200台分のスペース確保までして俺に電話かけてくるか?」
その後、玲さんからちまちま連絡はくるものの、ご飯行こうだなんて誘いもないし。あ、それよりもストレート打法で付き合おうとは言わるな。
「だって。合コンで1度会っただけだし。」
「俺とのキスとの等価は断った癖になあ?」
「は、はあ? だ、だから、すみませんって。」
「上司としてじゃなくてね?男と意識した上で謝ってちょーだい?」
「ご、ごめんね香椎さん!」
「で? 五智川とはヤッたの?」
「やってないッ」
やはり、ねちっこいな香椎。
私が嘘はついていないと、頭を何度かフルフルと横に振る。香椎のふうっと息を吐くようなため息が、また新たな緊張を誘ってくる。
「あのさあ。五智川の執着ってすげえんだわ。」
「へ?」
「昔付き合ってた女への貢ぎ方、半端じゃなかった。」
「……。」
「お前、合コンで何したの?五智川に信仰心抱かせるようなことした?」
「信仰心?」
「まあ早い話が、恋愛対象に“推し”に近い感情を抱くんだよ。」
「うえっ、いやいやいや! だって、私だよ? ギャルモデルだよ?!」
「だから何したんだって聞いてんだよ。」