Re:Romance


 というか、さすがに日比野さん、いくら新人とはいえミスが多すぎるし。こっちが指示していないことまで先走ってやっちゃうんだよなあ。


 勝手な思い込みで、電話を新車部に回しちゃうことも何度かあった。


 25歳なのだから、勝手にやらない、事前に誰かに確認する、これは社会人として肝に命じておいてほしい。


「日比野さん、私は書類がそろっているかの確認作業をお願いしたはずだよね?なんで穴開けパンチしようと思ったの?」

「あ、あの。前の会社ではファイルしていたので……」

「いつも前の会社のやり方を出してくるけど、ここは前とは違う会社だよね?前のやり方が通用しないのは、理解してる?」

「は、はい……。」

「それならうちはうちのやり方があるんだから、どんなに些細な作業でも必ず確認して。」

「す、すみません。。」

「そもそも指示されていない仕事をやる必要はないからね?また慣れてきたら色々任せようと思ってるから。」

「はい……。」

    
 きっと、日比野さんとしては新しい仕事を必死に覚えようと意気込んで空回りしているのだろう。


 誰にだってそういう時期はあると思う。だからこそ先輩が教えていかなければならない。いくら派遣さんといっても彼女も一人の社会人だ。


 この先の社会でも歩んでいけるよう、立ち止まって彼女の欠点を正していかなきゃならないのが、きっと私の仕事。


 ちょっとキツく言いすぎたかもしれない。日比野さんが確認する書類を持つ手が震えている。


 すると高市さんが、わざわざ私に小言を言いにきた。


「先輩、ちょっとキツくないですぅ? いつもの敬語が消えてましたよ?」 

 
 私が高市さんに向かって、おもむろにため息を吐いてみせる。今日はデートなのか、いつもと違うピアスがちょろちょろと揺れている。あとメイクによる顔面が微妙にうるさい。

  
「高市さん、顔面のうるささとか気になるけれど、よければ日比野さんをフォローしてあげてくれます?」

「いいですよ? 私が“良い者”、先輩が“悪者”の役になりますけど、私は全然構いませんよ?」

「私も構いません。お願いします。」 


 そうだ。私普段から敬語口調だから、日比野さんからしたら、いきなりタメ語で言われて相当驚いたかもしれない。


 高市さんという逃げ道を与えて置かなければ、日比野さんはすぐに辞めてしまうかも。


 高市さんが日比野さんの元にいき、黒飴を渡して「穴開けちゃったけど大丈夫だからね!」とフォローしてくれている。


 大丈夫なのか。 

 
 私はとりあえずセンターに連絡して、証明書が穴開きでも有効かどうかを確認し、謝らなければならない。


 でもいいのだ。今日はなんてったって、実来君と二人でたこ焼き食べに行くんだから!


 ちょっとやそっとのミス、どんとこいや!



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