Re:Romance
「そもそもつなぎ姿の女って、男からしたら紅一点のような存在でさ、目がいきがちなんだよね。」
「……はあ」
「それで休憩中は結んだ髪をほどいて?で、つなぎを脱げば女を全面的に出す格好?へえ。ふぅん。どこからどう見たって色目を使ってるようにしか見えないよ。」
「……」
だって、本当のことだもん。
これに関しては女に慣れきっている香椎も言っていたことだ。『真田のギャップ作戦は、うちの男性陣の士気を高めていて非常に助かる』って。
確実に褒めてるようにしか聞こえないけど。
「それをわざとやってるなら真田さんは性悪だし、気づかずやってるなら魔性だよね。」
「き、気づいてませんよ、そんなこと!」
「性悪であれ魔性であれ、どちらにしろ女性には嫌われがちってこと。」
さっきの仕返しで私が言ってると思ってる?
私はもう崖から飛び降りた悪役アラサー女だから、実来君のように復讐心など持たぬのだよ、真田さん。
悪役らしく悪役らしくないことで自己満してみた。
「でも、真田さんは100%嫌われるわけじゃない。私みたいな元モデルからしたら、真田さんにしかないそういった個性に憧れるもんなんだよ。」
「え?」
「その人にしか出せない特有のキャラって、私がいた業界では一番の武器だったから。私にはそれがなかったから、だから私のモデル人生は21歳と短命だったんだよ。」
真田さんの方がずっと人として魅力的だし、きっと実来君もそんな真田さんの魅力に気づいてるはずなんだよ。
そこまで深くは口に出せなかったけれど。
真田さんは真田さんの個性を大切にすればいい。今は嫌われる存在でも、整備士として、会社の社員としてもう少し上の立場にいけば、必ず認めてもらえるだろうから。
「叶恵先輩、あの、私……。」
駅の券売機の前で、うつむきかけた真田さんが下唇を小さく噛む。その姿もあざとくて、でもやっぱり悔しくも私を魅了する。
そして何かを決めたかのように、顔を上げた。
「実来君のことが好きなんです。」
「え?!」
「研修中からなんですけど、気軽に話してくれるし、ぶっきらぼうにみえて、実は優しいし……。」
「……うん。」
うん。って肯定しちゃってまあ私。
この流れは、あれだろうか。
先輩、応援してね? いい? 応援だよ? とかいう女子特有の遠回しな牽制なのだろうか。
私は素直に、それを受け入れられるのだろうか。次回の里夏に乞うご期待。
「だからわたし、負けませんから!」
「……はい?!」
「失礼します!」
こっちの方だったか真田静久よ。
真田さんがうなじ付近で結ばれたリボンを揺らし、ホームの方へと消えてゆく。それからふと振り返って、私に軽く頭を下げた。
私はね、最初は応援しようかなと思ってたんだよ?
でもそんな風に女のライバル心を燃やされたら、俄然やる気になりそうでなれるのかしら28歳の叶恵里夏。
実来君の復讐心って、どうしたら無意識にあざとく消せるのか教えてよ。真田さん。