Re:Romance


 ずっと見てきた先輩の曲線美。でも何も纏っていない姿は、今まで見てきたどの里夏先輩よりも綺麗だった。


 もしかすれば、このまま付き合えるかもしれない。


 雲の上の存在のような人と、気持ちの悪い僕が?


 例えば、童貞を奪われた責任だと追求すればいいだろうか? いや、それこそ気持ちの悪さが際立つばかりだ。


 うちは僕が小学生の時に父親を亡くしている。


母が朝晩問わず必死に働き、大学進学は難しいだろうと思っていた。でも大学によっては成績優秀者の特待枠が存在する。


あらかじめ高校から成績優秀者として入学しておけば、大学の推薦も貰いやすいだろうと睨んでいた。
    
   
 不運が訪れても、人間、水面下でもがけばどうにでもなるもの。


無論そのための努力は必要となるけれど、幸運な境遇でなんの努力もしない人間よりは、ずっと高い位置に身を置ける。少なくとも姉と僕はそう理解している。
 

 姉のようにコミュ力を武器に生きようとする人間もいれば、僕のようにしたたかに生きる人間もいるのだ。


『実来君、好きです。私と付き合って下さい。』


 里夏先輩とは電車で帰って。途中下車した僕を待ち伏せていたかのように、島咲七花がそこにいた。


 普段下校はバスで、その日はラブホ帰りだから電車。なぜ、その日僕が電車で帰ることを知っていたのか。


 三度目の告白だ。 


『実来君、叶恵先輩とセックスしたの? 私ともして下さい。』


 ずっとつけていたのか。この女。 


『実来君、』


 何度も僕を呼ぶ声に、苛立ちが募って。


そして僕は、そのままの気持ちを彼女に伝えた。


『僕は叶恵先輩以外とはセックスしない。』

『……え、』

『僕は、叶恵先輩以外とは付き合わない。』


 確証のない、断言のような宣言だった。彼女を突き放すためとはいえ、あり得ないようなことを豪語したのだ。


 それから数日後、彼女は僕の言葉などどこ吹く風のように四度目の告白をしてきた。


 しばらく島咲を避けるため、友達と帰っていたせいか、その日はたまたま帰りに寄った図書室の中にある書庫でのことだった。


 生徒はまばらに自習室で、カウンターには一人、パートの女性が座っている。


 奥の部屋にある特別書庫には、僕と島咲の二人きりだ。古い羊皮紙ばかりが使われた書籍が並び、カビ臭い毛布のような臭いが漂っていた。


『実来君、叶恵先輩といつになったら付き合うの? ねえ、叶恵先輩以外と付き合わないんでしょう?』

『僕がいつ付き合おうが、君には関係ないだろ。』

『それなら私と付き合って下さい。好きです実来君。』


 今までは島咲の言葉に嫌悪しか抱かなかったが、その日はさっさと里夏先輩と付き合えと言われているように感じた。



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