Re:Romance
『ねえ実来君、私、叶恵先輩のことけっこう見くびってたよ。』
『は?』
『もっと、攻撃的な人かと思ってたんだけど。どうもそうじゃないみたいだね。』
島咲の口角が、ニタリと上がる。
『……なに、したの。』
『なにも? ただ、私の実来君を取らないでって言っただけ。』
『……最低、だね。』
もしかしたら島咲が、先輩によからぬことを吹き込むのではないかという可能性も考えてはいた。
それが上手く現実となったのだから、この機会を利用する手はないと思った。
『最低。だけど、』
『だけど?』
『悪くない。』
余裕の顔を見せているつもりの僕にも、特に物怖じする様子のない島咲。ロボットのように、何度目かの告白を口にした。
『ねえ、実来君。悪くないなら、私と付き合ってください。』
『それ、本気で言ってる?』
『私と、付き合ってよ実来君。』
僕の言葉に応答しているとは思えない、島咲の身勝手な機械的二語文。
覚悟を決め、僕はふっと息を漏らし、そして不敵に目を細めた。
『いいよ。』
『……え?』
『僕たちは今、付き合った。だから島咲、セックスしようか。』
『え、……え?』
初めて見る、島咲の困惑する姿。いつも見開いたような目が、さらに見開いているように思えた。
『ねえ、誘ってきたのはそっちじゃん。早く脱いでよ七花。』
『な……ど、どうしたの、実来く、ん?』
戸惑いながら、後退りをする島咲。
本が並ぶ書架に背中をつけたところで、僕は彼女のスカートに手をかけた。
プリーツの裾から、構わず手を入れて。太ももを適当に撫で回す。島咲の足が震えている。
『早く脱いでよ。脱げない?』
『ま、……まって、』
優しさなど微塵も持たず、甘さも垣間見えない僕の手で、彼女の腕を強く掴む。
『痛ッ、』
『うるさいよ、声出すならもう別れる。』
『ッ』
こらえるように唇を噛む島咲が、涙を溜めている。
『泣くなら別れるし。付き合って早々うざい彼女になるなよ。』
『や、やだッ』
『は? 嫌なら別れる?』
『い、……わッ別れるからッ』
僕を力のない手で押しやった島咲。身を震わせるように書架に持たれ、そのままへたり込んだ。
『いっとくけど誘ってきたのはそっちだし。僕を付け回したのもそっちだから。』
『……ち、ちがう。わたしのしってる実来くんじゃ、ない……!!』
『それはこっちのセリフだよ。』
僕の友達が、島咲が僕を付け回していた証拠写真を集めてくれていた。
誰もいない放課後の教室で、島咲が僕の机の中から文庫本を盗んでいた写真もある。サッカー部の友達が証拠写真を押さえてくれたのだ。
僕は里夏先輩に告白することを決めた。
真っ向勝負は僕には似合わない。島咲七花を利用したのだ。