Re:Romance


 無事、岡野さんとの誤解を解いた叶恵。さすがに朝から気力を使い自分の椅子から脚を投げ出す。


 すると高市さんが、日比野さんを離れた作業スペースに呼び、注意を促してくれた。


 顧客相手に喧嘩ごしって。どうなの?


 さすがに課長に相談した方がいいかな。当分これが続くのかと思うとキツすぎる。


 先週、センターのお局さんから言われた、本人のミスは本人から連絡すべきだという言葉を思い出す。


 時間を置いてから日比野さんに、今度岡野さんが来店した時にちゃんと謝ってほしい旨を伝えておいた。



 お昼休み、交代で日比野さんと高市さんがランチに行ったと思ったら、高市さんだけがパンを持ってデスクに戻ってきた。


「先輩、この状態がしばらく続くんですかね?」 
  
  
 途方のない魚の目をする高市さん。塩バターメロンパンにかぶりつきながらポツリと言った。


「高市さん、ありがとうね。日比野さんに注意してくれて。」

「いえ。てか先輩、なんか口調がタメ語になってません?」

「うん。私、怒るとタメ語になっちゃうから。敬語からタメ語のギャップ持たせると、怖いかなって。」

「先輩って、見た目からは想像できないくらい他人に甘かったりしますよね。」

「え?」

「だって、つまり日比野さんのために敬語口調やめたってことでしょ?」   

「買いかぶりすぎだよ。」 

「買いかぶりすぎました。でも私、先輩が好きです。」


 誰もいない事務室でこえーな高市さん。百合とかまじシャレんなんないよ。  


「先輩がいなかったら、この状況、どうなっていたことか!」


 高市さんが机に突っ伏してしまった。左手に掲げるメロンパンは無事のようだ。


「そういう意味かい。」

「先輩、私今ちゃんとした男性に恋してるんで勘違いしないで下さい。」

「今までちゃんとした男以外にどんな生物に恋してきたの。」   

「失礼な! ちゃんと皆2足歩行ですよ!」

 
 男のハードル低いな高市さん。考えてみ? 世の中には2足歩行のレッサーパンダだっているんだよ?

 
 でもまあ私だって高市さんがいてくれてよかったと思ってるよ。


 ね! なんて高市さんを見れば、すでにスマホをいじっていた。 


 外から車道の流れる音が事務室に聞こえて、今私たち、先輩後輩の青春時代を謳歌している。





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