Re:Romance
ランチに中古車部の休憩室でちくわパンを食べていれば、実来君がやって来た。
会いたいと思った矢先に来てくれるなんて。私たち、運命のセフレだね。
「先輩、お昼にすみません。」
実来君もお昼なのかと思っていたら、どうやら手ぶらのよう。
「実来君。元気だった?」
「いや先週一緒にたこ焼き食べに行きましたよね?」
「いや、うん。そうなんだけどさ。」
「先輩は? 元気なさそうですね?」
はあ。とあからさまにタメ息をついてみせてから。疲れていたせいか、そのままの気持ちが口から出てしまった。
「たこ焼き、実来君と二人きりで食べたかったなあって。」
ちくわパン片手に、なに言ってるんだろ。
自分が恥ずかしいこと言ってることに気がついて、適当に「ははは」と誤魔化そうとしたところで。
「それは、僕もです。」
そう言って。実来君がふと、私の唇にキスをした。
「っな、」
食べかけのちくわパンを片手に持っていたとしても、全身は一気に火照るから。恋欲は食欲にまさるのかもしれない。
「里夏先輩、」
「なッ、なに……」
キュッと心臓が萎縮して、私もかしこまってちくわパンを袋の上に置く。
「先週頭、日比野さんが新車部に郵便届けに来た時に、営業の向田さんが日比野さんに査定依頼の資料渡したらしいんですけど、まだ見積書が来てないんですよね。」
「……はい?」
「21件分の見積書って、今日までにできそうです?」
「……」
「もしかして先輩、今泣きそうですか?」
「どっちの意味で?!」
「自問。」
キスされたから?! 日比野が査定依頼書の存在を忘れてるから?!
多分、どっちの意味でもだよ! キスの前に先言えよ実来心晴ー!
「日比野さんっ!先週新車部に郵便届けに行った時に向田さんから査定依頼書もらってない?!」
ランチも素早く切り上げて、慌てて事務室に戻れば、すぐに日比野さんに査定依頼書の事実を突き詰めた。
「……っあ、そ、そういえば。」
そう言って、自分の机の引き出しからホチキス留めされた依頼書を出す日比野さん。
「も、もしかして、これですか?」
「なんですぐに言わなかったの?! うちが見積出さないと困るのは新車部なんだよ?!」
「す、すみませッっ」
強張った表情で青ざめる彼女。その顔はもう見飽きたって! なんで頼まれたことすらも忘れる?!
とにかく21件分の見積書を急いで作成しないと!