Re:Romance
「日比野さん! すぐに新車部の向田さんに連絡して!」
「れ、れんらく? ですか?」
「いいから! すぐに内線で謝って! 今日何時までに持っていけばいいか聞いて!!」
「は、はいっ」
くっっそー!!
高市さんが依頼書を半分手に取り、すぐに見積作成に取りかかってくれる。私も、実来君とのキスに浸る暇もなく、もう半分の見積作成に取りかかる。
21件分の見積書が完成したのがすでに17時。日比野さんは17時までの勤務だけど、本人の希望もあって二人で新車部に見積書を届けに行く。
その途中だった。新車部の階段を上って行く時、真田さんが上の階から下りてくるのが見えた。
そのまますれ違って、ほんの数秒。
真田さんが悲鳴を上げて――――
「きゃあッ」
「真田さんっ!!」
後ろからついてきていた日比野さんが、その名を叫んだ。
何が起きたのかと下を見れば、階段の下にいた新車部の営業マンが、なぜか真田さんを抱きとめている。
「あっぶねーーー。」
「ど、どうしたんですか?!」
私が慌てて下りていけば、日比野さんが私の元に駆け寄り、私の肩辺りを見つめて言った。
「か、叶恵先輩も、大丈夫ですかっ?!」
「え?」
「今、真田さんと肩、ぶつかりましたよね?!」
「……は??」
意味が分からず、その場で固まっていれば。真田さんを抱きとめている営業マンが私を見て言った。
「あぶないだろ叶恵さん!真田さんが落ちるとこだったじゃないか!」
「は、はいい? わ、わたし??」
確かに慌てて走ってはいたけれど、ぶつかった感覚はない……よ? うん。絶対、ないはず。
すると日比野さんが、営業マンと真田さんに向かって頭を下げた。
「すみません! 私のミスのせいで、叶恵先輩を慌てさせてしまって。」
慌てさせた?
いやいや。んなアホな。
あたかも私がぶつかったせいで真田さんを危ない目に合わせたような言い方。なにそれ??
「い、いや、わたし、ぶつかってなんか……」
そこから言葉を繋ごうとすれば、日比野さんも営業マンも、私の方をじっと見ている。なんだろう。
なんでそんなに、私を加害者にしたい……?
なにがなんだか分からず、押し黙ってしまえば。上の階から見ていたらしい新車部の事務員二人が、こそこそとつぶやいた。
『……え?実来君の取り合いで、真田さんを突き落とそうとした?』
『うっそ、そこまで修羅場状態?』
………うそ
え? なにその噂……
まさかこんな状況になるとは思わず、頭が追いつかない。