Re:Romance
お昼、昨日駅前で買ったラズベリーラスクの小さな紙袋を持って、整備工場の方へと急いだ。
真田さんに、もう一度謝ろうと思って買ってきたのだ。
「真田さん!」
「叶恵さん! 昨日は迷惑かけてしまってすみません。」
「私の方こそだよ! これ、良かったら食べて。」
「わっラズベリー?! 新商品だ! 私、ここのラスク大好きなんです!」
まばゆい笑顔を見せる真田さん。
ポニーテールにした髪を揺らし、「ありがとうございます。」と頭を下げた。真田さんの優しさにホッとする。
「本当に昨日は、ごめんね。自分でも無意識だったみたいで、すぐに気づかなくって。」
もう終わったことだし、未遂の人身事故で意地を張るのは良くない。そう思って、素直に無意識の事実を受け入れることにした。
昨日散々みちるに愚痴れたし、涙流しながらビール流しこんだからもう大丈夫。今日から切り替えていこう!
「あ、あの、そのことなんですけど、」
真田さんが私に何かを言おうとした時だった。
実来君が向こうの方から歩いてきたのだ。
「あ、実来君だ。」
「あれ? 先輩。何やってるんです?」
私たちの傍までやって来た実来君が、真田さんの持つ紙袋を見て不思議な顔をする。
……なんか、嫌だな。実来君に昨日のこと知られるの。
新車部では実来君を取り合ってるだの変な噂が立てられてるし、私が真田さんを突き落としたなんて知ったら、軽蔑するだろうな……。
でも営業マンにも見られていたし、どうにも隠せない事実だ。
「真田、車検3件分の点検終わった?」
「ああ、終わったよ! 今連絡しようかなって思っててたとこ。」
「一応目視で確認させて。」
なんとなく居づらくなって、私はその場を立ち去ろうとした。
「実来君、お昼一緒にいかない? よかったら、叶恵さんも。」
「……え?」
真田さんにまさかのお誘いを受けて、実来君と顔を見合わせる。
「僕はOKだよ。ちょうどどこかで食べようかなって思ってたし。」
「あ、じゃあこの間のカフェ行かない?」
「はあ? あんなコスパ悪いとこ腹の足しになんないじゃん。」
そもそもなんで私、真田さんにライバル意識持たれてるんだろ?
誰がどう見たって育ちの良さそうな二人の方がお似合いじゃない? そりゃ実来君のこと、好きだけど。
実来君が真田さんと付き合ったら、セフレの関係も終わるのかな。