Re:Romance


 終わりが見えないと思っていた復讐のセフレ関係にも、終わりはあるのかもしれない。ああ、そっか。実来君が飽きたら終わりなのか。


 それなら昨日の突き落とした事実を知ってしまえば、きっと実来君は私に愛想つかす。


 昨日のことといい、噂を立てられていることといい、なんだかすでに負け戦で参戦する気にもなれず。 

          
 私は真田さんの誘いを断った。


 私のせめてもの居場所は、中古車部の事務室だ。それを守るためには仕方ない。これ以上私情の噂を立てられては困る。


 それなのに。


私の不運は底がないらしい。これって、人生リセット案件なの?



 また新たな事件が発生したのは、その2日後のことだった。


 真田さんと実来君が目視で確認したはずの車検終わりの車。


その顧客に返したはずの車3件から、不具合があるとクレームを受けたのだ。


空調設備やエンジンの不具合ならまだ理解できる。しかしその3件分の車は、なんと後輪のタイヤに釘が刺さっていたというのだ。


 そんな嫌がらせにも似た車検後の納車。今まで聞いたこともない。 


 すぐに新車部営業マンと整備士たちとの間で緊急会議が行われ、その日は騒然とした。


 あまりの緊迫感に、中古車部は一切触れられず。


 実来君と真田さんのことが心配なまま、さらに2日が過ぎた日曜日。


 なぜか私は新車部の会議室にて、橋田部長と濱部課長、それに整備工場の工場長、宍戸《ししど》長を前に座らされていた。


 香椎はまだ不在だけど、役職者だけが揃う空間に一人、身を置くのは初めてのことだ。ワケがわからず、ただ息の詰まる思いで縮こまる。


「叶恵さん、君は水曜日のお昼頃、どこにいた?」


 真ん中に座る橋田部長に、事情聴取のような雰囲気で聞かれた。


「あ、えーと。真田さんのところに用事があって、整備工場にいましたけど、」

「そうか。じゃあこの画像は、君で間違いないってことかね?」


 橋田部長に渡された荒い画像が4点、A4用紙に並んでいて、そこに映る人物に目を凝らして見る。


「それは整備工場の防犯カメラに映っていたものだがね、」

「はあ。」 

「納車前の車のタイヤに、釘を刺したのは君かい?」

「はい?!」

「その画像、眼鏡をかけて髪を一つに縛っている姿。君だろう。」

「はああ?!」


 なになに。何事。


 そんなことってある?! ねえって。


 自分の知らない自分がもう一人いるって?! 世にも奇妙な叶恵里夏じゃん!


 橋田部長に渡された荒い画像には、確かに眼鏡をかけて、髪を後ろで一つに縛った制服姿の女性がいる。


 ただごめん。いくら画像荒くてもこれだけはいえる。私、こんな体型じゃないと思うんだけど。  


 今の体型を維持するのにどれだけ苦労したか分かってる? 実来君には昔より太ったって言われてショックだったけど、これでもBMI18キープしてんだよ! 画像の人はどう見たってBMI20はあるよ?!  




       
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