Re:Romance


「これはやはり、事故と確認ミスとして片付けておくべきなんじゃないですかな。」 


 宍戸長と目を合わせた橋田部長が間を置いて、ゆっくりと実来君の方を見た。
    

「そうなると真田さんと実来君、君たちの確認ミスということになるのだが、それでもいいのかね?」


は、あ?


 いいのかね?って。自分もカバーするくらいのことは言えないの?


 濱部課長は変わらず私を犯人に仕立てたいようで、「画像を調べた以上、叶恵くんの責任で謹慎処分という形を取らざるを得ないだろう。」などと言っている。


「ちなみに、なんですが。その時間帯に新車部と中古車部の事務室にいなかった人物は叶恵さんを含め12名、うち8名は顧客周りで外出中。残り4名のうち2名は顧客案内、残りの2名は、叶恵さんと、郵便物を出しに行っていたという日比野さんになります。」

「……」

「日比野さんだけ誰からも証言が取れていません。郵便物もポストに出しに行っただけだそうなので、証人がいないんですよ。」 


 今日、日比野さんは休んでいる。朝、課長のもとに体調不良だといって電話がかかってきたそうなのだ。


「そもそも階段での件で、“ぶつかった”と表現したのは日比野さんですし、今回の件もどこにいたのか確かな証言がないのは彼女だけです。一度、彼女にも同席してもらった方がいいのではないでしょうか。」

「日比野くんは派遣だろう。同席させたところで責任を問えるわけでもなし。」

「なぜです? 派遣に責任が問えない規約がうちと派遣会社の間で交わされているのですか?」

「いや、ないがねえ。」


 濱部課長は飽きてきたのか、ボールペンを回し始める。しかし橋田部長は気を散らすこともなく威厳をかざしている。


 一時の気も緩められないというように。

 
「というか、今回の件は君たち3人の私情が関与してるのだろう?日比野さんはまだ来て日は浅いし、関係ないんじゃないかね?」   


 橋田部長が、実来君を食い入るように見つめる。

 
「私情が関与していないといえば嘘になります。」

「ほう。じゃあ真田さんと叶恵さんとの私情のもつれは認めると?」


 ここまで一切の揺るぎをみせなかった実来君。きっと普段の仕事でも隙がないのだろう。橋田部長も、私一人の時とは打って変わって神経を尖らせている。


「もつれ?もつれではなく、端的に申し上げて、僕は以前より叶恵さんとお付き合いさせていただいております。」

「え?」

「僕が今こうして同席しているのは、私情も挟んでいることも認めます。ですが今回のことは故意による事件なのですから、社員全員の証言を取らずして彼女ばかりを責めるのはおかしいと思うんですよ。」


 待って待って実来君! 頭が追いつかないよ!


 以前からお付き合い? 以前より今日までセフレじゃないの?!


 いやこれはきっと実来君の建前なのだろう。今回の事件を乗り切るための作戦。


 濱部課長と宍戸長は、どうしていいか分からないといったように額を手で抑えたり、頭を搔いている。


 でも橋田部長は食い下がらない。むしろ切り札を出してきたのだ。



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