Re:Romance


「実来君、君は逆出向を狙っているんだってね。」

「は?」

「この件に関してこれ以上深入りするようであれば、君の道は閉ざされることに為りかねないんだよ?」      

      
 その圧迫感のある言葉に、握られた手から伝わる緊張感。実来君の身が引き締まるのを感じた。


 ああ。実来君が私を助けにきたのは、なにかよくない感じがする。


「君と真田さんの確認ミスということで終わらせれば、支社に報告がいって逆出向の推薦枠から一旦除外されることにはなる。が、また来年度の成績次第で挽回のチャンスはあるんだよ。」

「……」

「もしこれ以上深入りするようであれば、君の逆出向の道は永遠にないものと思え。これは忠告じゃない。」

「まさか、命令ですか。」

「その通りだよ。」


 嫌な汗が背筋を伝う。


 こんな世界、ドラマの中だけかと思っていた。


 でも橋田部長のこの変わりようは、なにか触れちゃいけないものに触れてしまったのだろう。


 まさか、実来君の逆出向にまで響いてくるとは思わなかった……。


 謹慎処分って、どこまでの処分なるのだろう? 謹慎明けても、私の居場所ってあるのかな。


 濱部課長の下でこの先働きたいだなんて絶対に思わないけれど、高市さんがいて、今まで関わってきたお客さんがいて。真田さんとだって最近ようやく打ち解けられるようになってきたのだ。


「あの、謹慎処分って、どれくらいのものなんですか。」


 私のその言葉に、実来君がふと私の方を見るのが分かった。


「2週間の自宅謹慎とその期間の給料停止。支社と本社への始末書提出と聞き取り調査(ヒアリング)後、本社人事の判断により一定期間の減給。といったところかな。」

「そうですか。」 


 なんだ。実来君の逆出向停止より全然マシじゃん。


 いやでもさすがに私、もうこの店舗には戻れないだろうな。多分居づらくなって、辞職するのがオチだろう。 


 実来君は私の手を強く握ってくれるけど、私はその手を離してもらうために実来君の方を見た。 


 眉をひそめて、私を咎める顔だ。今絶対に『先輩、馬鹿でしょ』って言ってる顔。


 大丈夫だよ、実来君。


私、こうやって生きるのに慣れてるから。



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