Re:Romance
Majesty
台湾出張中、うちのエースが太平洋を渡り伝書鳩を飛ばしてきたのは、まだ出張3日目のことだった。
〈日比野芽衣って何者ですか。就業妨害ロボですか。〉
勘のいい真面目心晴君は、いつから彼女と俺の関係に気付いていたのか。
〈日比野さんの電源スイッチどこについてます?早くオフにしないと中古車部は世紀末を迎えます。〉
こっちは社員レベルの揉め事に付き合ってるほど暇じゃないんですけど。里夏ちゃんの危機くらいお前が救えなくてどーすんのよ。
と言いたいところだけど俺は里夏に罪過がある。いや罪過だなんて表現は堅苦しすぎて官能さの欠片もないからよそう。
俺が里夏を傷つけた責任は、里夏を幸せにするまで取り続けるものだと自得している。
新色であるミント色のコンパクトカーとコラボ企画として『RUNRU』の叶恵リカを起用したのはこの俺。
当時ムラノの販促企画部にいた俺は、モデルの仕事で伸び悩んでいた里夏にはナイショで、親の権力振りかざして彼女を起用した。
まだその頃19歳のモデルと、24歳のムラノ自動車社員の恋物語はたった一年で幕を閉じたが、俺にとっては濃厚濃密に鮮麗さを極めた。
人混みに紛れて佇む常夜灯は、愛に飢えながらも慈愛に満ちていた。
自分だって相当な精神力を要する世界にいる癖に、人のことばかりを気にして俺の話にばかり耳を傾けていた里夏。
社会のことは分からないと言いつつ、ただ隣にいて俺を全肯定してくれる安心感が、どれほどの回復薬になったことか。