Re:Romance


「半導体なしにして自動車は作れないのが現状です。私との結婚を破棄すればムラノは劇的な半導体不足に陥るでしょうね。」

「確かに回復傾向だとしても、来年度うちの目玉となるクラウスの新型は一旦発表を中止するだろうね。ムラノの半導体シェアは甚目電子が誇ってんだから。」

「寿佐さん、女の嫉妬の怖さを理解していただけましたか?」

「芽衣の執着心を体験できて俺の経験値がマイナス4くらい上がったかな。」

「なんにせよ、叶恵さんと絶縁していただければ私の気も収まります。」


 芽衣が勝ち誇ったように口角を上げながら紅茶をすする。


 俺は飲みかけのエスプレッソをそのままシンクに流し、カップを置いて芽衣の隣に腰かけた。


「俺が今回の台湾出張で得た魚は大きいよ?新たな製造拠点が見つかったわけだからね。」

「それはよかったですね。」

「自動車部品が一堂に揃う工場でね。」

「そうですか。台湾は今や世界大手メーカーの部品供給体系に参入を果たしていると父が言っていました。」

「知ってる?SWLCって会社。受託生産で世界シェアトップの半導体メーカー。」
 
「………」


 いくら箱入りといえども知らないわけがないだろう。Semiconduct With Life(命ある半導体) Company=SWLCは甚目電子同業のライバル、いや世界最大手ともいえる半導体メーカーだ。


 PCやスマホ用半導体をメインに製造している台湾のメーカーで、自動車分野では現在アメ車がシェアを占めている。が、今後は自動車分野にも勢力拡大を視野に、他諸外国の自動車メーカーとも提携を結ぼうとしているのだ。


「その台湾のムラノ自動車製造拠点となるのがSWLCが管理する共同工場でね。」

「まさか、SWLCの半導体を取り入れるおつもりですか。」

「ほら、台湾有事でアメリカは日本に軍事的な協力を期待してるでしょ?生活レベルでも、アメリカから日本の大手企業やメーカーと手を繋いでおくべきだって話があったみたいでね?」

「そんな大がかりな話、このタイミングで出てくるっておかしくありません?!」


 元々手を打っていたに決まってんじゃん。


たかが箱入り娘一人の嫉妬一つで、命からがら爆弾処理してる俺の身にもなってみろっての。


「甚目電子と明治から続く繋がりにいつまでも依存してると思うなよ?こちとらいつだって破断する覚悟はあんだよ。」

「なっ、経営者でもない癖にあなたの一存で決められるわけがないわ!」
 
「うるせーよ嫉妬だのくだらない感情一つで里夏を傷つけんならお前の家族ごと食いっぱぐらせるツールはいくらでもあんだよ。」


 俺はビジネスバッグから高市がまとめ上げた、中古車部で芽衣が犯したミスの報告書の束と、実来君から送られてきた画像とその画像解析結果の資料を取り出しテーブルに投げた。












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