Re:Romance
「金貰って働く意味も知らねえお嬢様は、自分の犯した罪の重さも図れねえのかよ。」
俺が台湾のSWLCに訪れた際、たまたま試験段階だという最新型の画像解析システムを見せてもらった。警備会社の解析システムを製造受託しているのだとか。
せっかくだから試しに、実来君から送られてきたうちの整備工場の防犯カメラに映る人物の画像解析をお願いしたのだ。
「な、なんですか、これ……」
その画像解析資料には、白黒ではあるが鮮明に映る横顔と人物の身長、性別、体型までもが人物の図式を用いて事細かに記されている。
「お前が仕組んだって証拠を、このまま甚目電子の全役員と警察に突き出してやったら俺の気は収まるかもしれねえがどうする?」
「っ……!」
うちの店舗の役職者どもだって芽衣の仕業だってことはなんとなく分かっているだろう。
ただ芽衣が甚目電子の取締役専務の娘だってことも知っている手前、無言の圧力で咎めることができないのだ。
馬鹿どもが。それでもお前ら社員を守る役職者なのか。
ビジネスバッグを手に取り、ソファから立ち上がる。俺は芽衣を上から見下げ、射竦めるように睨みつけた。
「忠告はした。」
「ま、待って!寿佐さん!」
「待たねえよ。頭冷やせご令嬢。」
「こっ、この、チャラ御曹司!」
「よし、それについては自他共に認める。」
ムラノグループの派遣会社を通して乗り込んでくるとは、“甚目電子の日比野芽衣”を根っこから周知させて逆らえない環境を事前に作るやり方が、いかにも女の悪辣さを物語っている。
でも俺は、芽衣を見捨てることはできない。
17歳から芽衣は俺という結婚相手しか見ずに今日まで過ごしてきたのだ。恋愛もできないまま政略結婚をし、俺と骨を埋める道しかないのだ。
芽衣がテーブルに突っ伏し、嗚咽を上げながら泣き始める。
こいつの嫉妬も、罪をなすり付けられた里夏のことも全部俺のせいだ。
胸が押しつぶされそうになって、本来なら抱きしめる資格もない俺だが、今だけ里夏の傍にいたいと思うことを赦してほしい。
そう思って部屋を出た。