Re:Romance
もうどうにでもなれ、という開き直った人生はこの際、小生意気なヒーローにでも託そうと思う。
「……玲さん、私と勝負しない?」
「え? しょうぶ?」
さっき見た部屋のシンプルな壁時計は、17時を指していた。
タイムリミットを適度につけて、リアルゲームを演出し誘い込む。
「今日中に、私を助けに来る人がいれば私の勝ち、誰も助けに来なければ玲さんの勝ち。っていうのは、どう?」
「へえ? また随分と大勝負に出るね。で、俺が勝ったらどうするの?」
「私の人生をあげる。」
「あはは。今日中って、香椎さんは今日明日メーカーでお偉いさんたちと大事な会議だよ? その後の飲みだってあるだろうし」
「でも時間は24時まである。」
「……本気?」
やはり玲さんの口角は上がっていて、その瞳は揺らいでいるから上手く興をさかせたのだと理解する。
「里夏ちゃんにとって不利すぎない? だって里夏ちゃんのスマホもないし、ここ、俺のうちだって分かってる?」
どう見たってここはマンションの一室で、何階なのかも分からない。
でも今の玲さんの言葉を察するに、恐らく香椎は玲さんの家を知っているのだろう。だって玲さんは香椎が助けに来ると思っているのだから。
私の望みはあまりに薄すぎる。
もし、昨日の夕焼け画像に何かを感じて、彼が私のスマホに電話をしてくれるなり、実家に会いに来てくれるのだとしたら。兄貴が玲さんの名前を伝えて、そこから玲さんちを探して――――
憶測の域が、さすがに難儀すぎる。いくら彼の綿密に計画立てる性格でも、そこまで辿ってきてくれるとは思い難い。
こんなことなら、さっさと私から電話でもなんでもして会っておくべきだったよ。実来君。
「玲さん。その代わり、ハンデちょうだい。」
「ハンデって、なに?」
「24時までは、私の身体には触れないでほしいの。」
玲さんの動きが止まる。
闇を描く黒目が、爽やかな笑顔へと切り替わった。
「じゃあ、24時過ぎたら目隠しして縛ってもいい?」
「シンデレラがアブノーマルの域!」
「あはは」
シンデレラは自らの足で帰るけれど、助けられるシンデレラだって悪くないでしょ?
「じゃあ、24時までなにしてる?」
「ご飯作ってあげる。こうみえて私、ツマミ作るの得意なんだ。」
「早速嫁気取り?」
「気取ってねえし。それよりビールちょうだい。酒ないとやってらんないわ!」
「どんなシンデレラよ?」
ねえ助けに来てよ、実来君。