Re:Romance
Portrait



 朝から車検で顧客回りをして、ショールームでの新車契約を三件勝ち取り、午後から中古車部の案内に回って今に至る。


 中古車部の休憩室で椅子に座り、スマホ画面を見つめればデジタル時計は17時になったところだ。 


 フォルダを開き、昨日里夏先輩から送られてきた夕焼け画像を見つめる。深みを増しかけたオレンジと淡いロゼのコントラスト。 


 これは『実家まで会いに来いよ』と言うことなのか。叶恵里夏史上最強のデレと捉えて行くべきなのか?


 自分が告白されたことがいまだに信じられない。


 その真相を夢で終わらせないためにこうして何度か電話をかけているというのに。


 その夢がトントン拍子で繋がることはなく。全くあの人ときたらとんだ実来心晴泣かせだ。 


 タイヤの件で部長には何度も掛け合ったが聞き入れて貰えず。香椎課長には「頑張ったねヒーロー。後は七光を持つ百獣の王に任せときな。」と言われたっきり。


 皆何事もなかったかのように忙しなく働いている。


 ―――と感傷に浸っていれば、突然着信音が鳴って。画面には“叶恵里夏”の名前が表示されている。


 緊張と少しの高鳴りを抑え、3コール目で通話ボタンをスライドした。


『も、もしもし、先輩?』

『いんや? 君の先輩とは言えないけれど、人生の大先輩ではあると思う。』

『ええと、どちら様で?』

『初めまして“実来くん”。里夏の兄貴です。』

『あ、ああーー……』

  
 そういえば『芽組食堂』で何度か見かけたことがある。高校の時一緒に食べに行った友人が、里夏先輩には年の離れたお兄さんがいると言っていたのを思い出す。
  
    
『君、“五智川玲さん”て人知らない?』

『はい?』 

『里夏と14時くらいにデートしにいくって出て行ったっきり帰ってこなくてさ。スマホも財布も置いて行ったから、すぐ帰ると思ってたんだけど。』

『五智川さん? ってあの、メーカー勤務の??』

『メーカー? なんのことか知らんけど。白いキラキラしたクラウスに乗った男だよ。』  


 クラウスのキラキラした白って、特殊塗装?それはクラウスに精通している人間かマニアでしか知りうることのない仕様だ。


『何度か電話くれたみたいだからかけてみたけど、君、里夏がどこ行ったかなんて知らないよね?このスマホから“玲さん”宛に連絡はしてるんだけど、既読も連絡もつかなくてさ。』 

 
 本社のヒアリングを控えている今、会社から連絡があるかもしれないのに、先輩がスマホを置いて長時間出て行くわけがない。





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