奏多くんは私に振り向いてくれない
日直の仕事のために心音は教室に戻っていた。
すると、その途中にある手芸部の部室から声があふれてきた。
『やっぱりさ、最近 心音って調子乗ってるよね?』
『ね!私も思った!!』
(あ〜ぁ、またか……。)
私はそう思いつつ、自分の心に蓋をした。
そして、そのまま教室に向かい、席について仕事を再開した。

「やっぱり、」
上から声が降ってきた。
見ると、そこには緑那くんがいた。
私は目元を拭って言った。
「なにがやっぱりよ。てか、邪魔だから出ていってくれない??」
この隠キャは本当は底なしに優しい。
知っている。知っているんだ。
だけど、今までの私がそんなことを許すことを拒む。
後からばかにしてくるんだ。それが、隠キャの特技だから。
「だって、涙は放っておいたら溢れてくるでしょう?……あぁ、僕がいるからですかね。」
そう言って緑那くんは離れていった。
それでいいはずだった。
私は無意識に彼の服の袖を掴んでいた。
「……別に、緑那くんのせいじゃないし。」











……それが、私と奏多くんの物語の始まりだった。
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