星を拾う指先が、温かくなるまで
 ギィ……。 重たい音を立てて、幽霊船から一本のタラップが、少女の待つ灯台へと渡される。

 降り積もる優しい光の中、降りてくるのは、 さっきまでの恐ろしい海賊ではなく、どこかの国の退役軍人のような気品あふれる紳士だ。

 白く上品な船長服に身を包み、少女を見つめながら船から降りて来る。
 風である僕は、彼がタラップを一段降りるたびに、 彼の骨の体が、覚悟を決めたようにカチリ、カチリと音が鳴る。

 船員が冷やかすように騒ぎ立てると、船長は振り返り船員に向け静まるように、人差し指を口元に当てた。

 僕の風さえも息を潜めた。
 あれほど騒がしかった船上のざわめきが、嘘のように雪の底へと沈んでいく。

 二人の距離が近づくと、白い指先が帽子を取り、胸に当てゆっくりお辞儀をする。
 少女は不安そうな表情を浮かべながらも、その振る舞いをなぞるようにスカートの端を摘み広げ、深く膝を折り挨拶を返した。

 不器用なカーテシーを、降りしきる綿雪が彼女を優しく飾り立てるかのようだった。
 少女は先ほどまで拾っていた「死に落ちた星」を、痛む指先を震わせながら、重たいカゴごと差し出していた。

 彼はそれを受け取ると、指で数え少し困ったように空っぽの眼窩の奥に、深い影を落としている。

 悲しみを含んだ沈黙の後、彼は気づいたように、「黒い薔薇を一輪」差し出すと、少女は、悲しそうに気を落とすように、それを見つめていた。
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