絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第五話】: 菩薩の刺青(しせい)と淫らな供物 3

目の前では、引きずり出された「裏社会の妻」と呼ばれた女が、屈強な二体の天狗に、女の両腕を力任せに吊り上げて、女の腰が折られ、無防備な臀部が突き出される。

極彩色の菩薩観音が、女の激しい呼吸に合わせてのたうつように波打つ。

(うぅぅ…っ。……これから何が始まるの。そして、私はどうなるの?)

老人の合図で秘書が、太く黒光りする革の鞭をしならせた。

秘書が手にした鞭が、空気を切り裂き、炸裂した。

ピシンッ、ピシンッ……。

(ひっ……! 痛い、痛いよね……。でも、どうして……あんなに打たれているのに、あの人の身体は、あんなに熱を帯びて光っているの?)

バチンと、乾いた破壊音が室内の空気を裂いた。

女の体は前方へ、弓なりに激しく仰け反る。

鞭が爆ぜるたび、女の身体は壊れた人形のように跳ね、豊かな胸が虚しく揺れた。

猿轡の奥から、押し潰された悲鳴が漏れ出る。

「んんんっ、ぐぁぁああ……」

二発目、三発目と、赤い筋が菩薩の絵を汚す。

女は衝撃に耐えきれず、天狗の腕にぶら下がり、
猿轡の隙間から、粘つく涎が糸を引いて垂れる。

(あんなに……あんなに激しく打たれて。なのに、どうして……。あの女(ひと)の股の間から、床に雫が滴り落ちているの……? 恐怖で失禁したの? それとも……)

「買い主からの依頼でなぁ、徹底的な服従の教育を施す……男に従順な『雌』にな……」

老人はひとみに説明する。

(男性に従順ってっ……、まるで、女性を家畜か何かにしか、見てないようだわ……。私もそうされるのかな……?男を受け入れるだけの、都合の良い……女に。理央、ごめんね……ママを、赦して……ママを……)

至近距離での鞭打ちは、想像を絶する迫力があり
ひとみは鞭打つ音に、女の悲鳴に、自身の感情が飲み込めれていた。

老人の冷徹な視線が、ひとみの戸惑いを見透かすように細められた。
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