絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第六話】 : 苗床の帰還 ―その胎(なか)に老いた種を宿して―1

秘書がひとみの肩に薄衣をかける。

「行くぞ」

それを合図に老人がひとみの肩を抱いて立ち上がり、別室のドアへ向かう。

ひとみは項垂れて、覚束ない足で歩を刻む。

(……この老人(ひと)の意思はハッキリしてる。私を妊娠させたいのね……。こんなに綺麗な秘書さんが傍に居るのに、……なぜ?私なの……)

ガチャン。カチャッ……。

2人の背後で、秘書がドアを閉め鍵を掛けた。

老人は傍らの椅子に座り、ひとみはべッドのシーツの海で、眼を瞑る。

(……子作り。私とっ、あの老人……嘘でしょ)

既に、ひとみの頭の中がパニックで真っ白になるが、どこか場違いな高揚感に震えていた。

「お父様はそちらで、ご覧になってて……」

秘書は老人を「お父様」と呼んだ。

(えっ……?父娘(おやこ)……うっそぉぉ。実の娘に、自分の情事を、目の前で見せるというの……?)

布団を跳ね除け、ひとみの耳元で囁く。

「……さぁ、女同士で楽しみましょう。そんなに固くならないで。リラックス……ううん、もっと『力』を抜いていいのよ?」

秘書が布団を捲りべッドに入る。

秘書の細い足が、ひとみの太ももに容赦なく絡みついた。

「んっ、ふ……」

ひとみの顎を引き寄せ、唇を重ね、強引に押し入ってきたのは、熱く湿った舌だった。

(……あぁ、なんて甘い香り。女の人の唇って、こんなに柔らかいの……? 拒絶したいのに、彼女の舌が口内を蹂躙するたび、脳の芯が痺れていく……)

熟練した愛撫のように、口内の粘膜を丹念に、挑発的に撫でまわされる。

抗おうとするひとみの舌を絡めとり、吸い上げ、唾液が混じり合う淫らな音だけが、見守る老人の前で虚しく響いた。

(嘘……この人、女の私がどこに触れられたら弱いか、分かってる……)

ひとみの胸を捉えた秘書の手は、指先で円を描くように、時には爪を立てるか立てないかの際どい力加減で、尖り始めた突起を転がす。

「あ、……ぁ、ん……」

ひとみが溜め息を漏らす。

「いい声。お父様も喜んでるわよ」

秘書がニヤリと唇の端を上げた。

ひとみの呼吸加減を計り、そして執拗に愛撫する。

秘書の細い足が、ひとみの太ももに容赦なく絡みつき、生身の肌の吸い付くような感触。

逃げようとするひとみの顎を、秘書は細い指先で強引に、だが愛おしそうに固定する。

「んっ、ふっ……」
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