絡まる残り香―滴る甘い蜜―
第八章 : すれ違い夫婦の崩壊、離散
【第一話】:鏡の中の「良い母親」3
「空気は大切よ。大事にしないと……」
「そりゃ、そうだ。大事にしないとね……」
笑い飛ばしながらも、ひとみの心はどこか冷めていたが、コーヒーに浮かぶ自分の顔を見つめていた。
(……私のは、不倫じゃないわね。ただ、抱かれる事に喜びを感じるのは、……不倫と呼べないわね)
私の居場所は、どこにあるのだろう。
同僚と話しをしていても、心ここにあらず、思案のトンネルは先が見えなかった。
夜7時近くになって。
「ゴメン、ゴメン……遅くなっちゃったね」
帰宅すると、理央がエプロン姿で待っていた。
「ママ、遅い!今日はハンバーグでしょ?私、玉ねぎ刻んどいたよ」
理央は自慢気に言うと、ステンレス製のボ一ルに入っている、玉ねぎの微塵切りを見せた。
「助かるわ。理央、手つきが良くなったわね」
「だって、好きな人に作ってあげたいもん。……あ、今の内緒!」
「あら、おませさん。誰のこと?」
小学5年生。少しずつ大人の階段を登り始めた娘との時間は、唯一、私が「母親」という記号を誇れる時間だ。
(この理央(こ)といる時だけが、私の幸せだわ)
キッチンに響く、娘の無邪気な笑い声。
この温もりだけが、私を「まともな人間」に繋ぎ止めている唯一の鎖だった。
午後11時過ぎ。
シャワーを浴び、寝室に入る。
ドアが物凄く重い感じがするのは、気のせいではなかった。
「そりゃ、そうだ。大事にしないとね……」
笑い飛ばしながらも、ひとみの心はどこか冷めていたが、コーヒーに浮かぶ自分の顔を見つめていた。
(……私のは、不倫じゃないわね。ただ、抱かれる事に喜びを感じるのは、……不倫と呼べないわね)
私の居場所は、どこにあるのだろう。
同僚と話しをしていても、心ここにあらず、思案のトンネルは先が見えなかった。
夜7時近くになって。
「ゴメン、ゴメン……遅くなっちゃったね」
帰宅すると、理央がエプロン姿で待っていた。
「ママ、遅い!今日はハンバーグでしょ?私、玉ねぎ刻んどいたよ」
理央は自慢気に言うと、ステンレス製のボ一ルに入っている、玉ねぎの微塵切りを見せた。
「助かるわ。理央、手つきが良くなったわね」
「だって、好きな人に作ってあげたいもん。……あ、今の内緒!」
「あら、おませさん。誰のこと?」
小学5年生。少しずつ大人の階段を登り始めた娘との時間は、唯一、私が「母親」という記号を誇れる時間だ。
(この理央(こ)といる時だけが、私の幸せだわ)
キッチンに響く、娘の無邪気な笑い声。
この温もりだけが、私を「まともな人間」に繋ぎ止めている唯一の鎖だった。
午後11時過ぎ。
シャワーを浴び、寝室に入る。
ドアが物凄く重い感じがするのは、気のせいではなかった。