絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第三話】:甘露の毒 1
週末の金曜日。
上野の夜は、吐き気がするほどの湿気と解放感に満ちていた。
ひとみは美奈代と合流し、不忍池近くのビルへ向かう。
目指すのは馴染みの、地下にある会員制のハプニングバーだ。
階段を下りるたび、重低音の響きが足の裏から伝わってくる。
扉を開けると、そこは欲望の掃き溜めのような熱気だった。
「おっ、ひとみちゃん! いらっしゃい!」
店長がすぐに見つけて飛んでくる。
「今日も一段といい女だね。みんな首を長くして待ってるよ。今日は特に、あんた狙いの常連が多いから、覚悟しなよ」
ひとみは適当に聞き流し、更衣室へと向かった。
女子更衣室の中は、戦場だった。
「ねえ、これどこに置けばいいの?」
「私のバイブ、電池切れてる最悪!」
あちこちで女たちの生々しい声が響く。
ひとみは手慣れた手つきで服を脱ぎ捨て、店の薄いガウンに着替えた。
鏡の前で、自分を「雌」に作り変える。
一瞬、先日ス一パ一で顔を合わせた、理央の同級生の母親と、今、鏡に写る自身とが、重なり有って見えた。
(私は病気じゃない、私は……、私は……女よ。
ただ、それだけ。ストレスを捨てに来ただけ……)
持ち込んだフェロモン香水を、耳の後ろ、脇、そして脚の付け根にたっぷりと吹きかける。
(よし……準備完了)
ツンとした香りが鼻を突き、同時に下腹部がじんわりと熱くなる。
「ひとみ、これだけは守りなさいよ」
隣で着替えていた美奈代が、真剣な顔でコンドームの束を突き出してきた。
「ゴムは絶対。生でなんて、何があるかわからないんだから。遊びなんだから、リスクは避けなきゃ」
上野の夜は、吐き気がするほどの湿気と解放感に満ちていた。
ひとみは美奈代と合流し、不忍池近くのビルへ向かう。
目指すのは馴染みの、地下にある会員制のハプニングバーだ。
階段を下りるたび、重低音の響きが足の裏から伝わってくる。
扉を開けると、そこは欲望の掃き溜めのような熱気だった。
「おっ、ひとみちゃん! いらっしゃい!」
店長がすぐに見つけて飛んでくる。
「今日も一段といい女だね。みんな首を長くして待ってるよ。今日は特に、あんた狙いの常連が多いから、覚悟しなよ」
ひとみは適当に聞き流し、更衣室へと向かった。
女子更衣室の中は、戦場だった。
「ねえ、これどこに置けばいいの?」
「私のバイブ、電池切れてる最悪!」
あちこちで女たちの生々しい声が響く。
ひとみは手慣れた手つきで服を脱ぎ捨て、店の薄いガウンに着替えた。
鏡の前で、自分を「雌」に作り変える。
一瞬、先日ス一パ一で顔を合わせた、理央の同級生の母親と、今、鏡に写る自身とが、重なり有って見えた。
(私は病気じゃない、私は……、私は……女よ。
ただ、それだけ。ストレスを捨てに来ただけ……)
持ち込んだフェロモン香水を、耳の後ろ、脇、そして脚の付け根にたっぷりと吹きかける。
(よし……準備完了)
ツンとした香りが鼻を突き、同時に下腹部がじんわりと熱くなる。
「ひとみ、これだけは守りなさいよ」
隣で着替えていた美奈代が、真剣な顔でコンドームの束を突き出してきた。
「ゴムは絶対。生でなんて、何があるかわからないんだから。遊びなんだから、リスクは避けなきゃ」