絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第三話】:甘露の毒 2

「わかってるって。そんなに心配しなくても」

ひとみは笑って、それをガウンのポケットに突っ込んだ。

ふと横を見ると、還暦を過ぎたような老婆に近い女性が、小瓶に入った褐色の液体を一気に飲み干していた。

「これ飲まないとね、中が濡れないのよ」

老婆はニヤリと笑い、戦地へ向かう兵士のような顔で、勇ましく更衣室を出て行った。

「ガッツあるわね……」

美奈代と顔を見合わせ、ひとみは苦笑いした。

いつものカウンターに座ると、何も言わずともマティーニが出てくる。

「お待たせ。ひとみちゃん」

「ケンちゃんありがとう。元気してた……」

バーテンダーのケンちゃんがウインクした。

ひとみもウインクを返した。

彼はスキンヘッドに髭面の強面だが、中身は完全に「受け」のゲイだ。

「今日の客、みんなギラギラしてるわよ。気をつけてね」

ケンちゃんの言葉通り、ひとみが座った途端に男たちが群がってきた。

「ねえ、お姉さん。一杯飲まない?」

「いい身体してるね、ちょっと触らせてよ」

入れ替わり立ち代わり、男たちが話しかけてくる。

会話なんて二の次だ。

彼らの手は、挨拶代わりにひとみの肩を抱き、尻を揉み、隙を見てはガウンの合わせから胸を弄ろうとする。

「やめてよ、まだ飲む前なんだから」

ひとみはザックバランにあしらう。

美奈代にも男たちの手が伸びていたが、彼女はそれを楽しそうに受け流していた。

やがて、フロアが暗転し、店長が中央に立った。

「さあ、お集まりの皆さん! 今夜もやります、じゃんけん大会!」

客たちがわっと沸く。
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